スコッチウイスキー情報
(英語:Scotch whisky) は、英国スコットランドで製造されるウイスキー。世界5大ウイスキーの一つ[† 1]。1990年発行のスコッチ・ウイスキー法により、「スコットランドの蒸留所内で、大麦麦芽の酵素によって糖化させた穀類の糖化液を、酵母の添加のみによって発酵させて蒸留し、木(オーク)製の樽に詰めて最低3年間スコットランドにある保税貯蔵庫の中で熟成させたもの」と定義されている(後述)。麦芽を乾燥させる際に使用する泥炭(ピート)に由来する独特の香りが特徴の一つである。イギリスにとって5大輸出品目の一つであり、その輸出規模はおよそ200か国、6000億円を数える。
1990年発行[† 2]のスコッチ・ウイスキー法(The Scotch Whisky Order 1990)第3条は、20世紀初頭に確立した定義(後述)を引き継ぐ形で、スコッチ・ウイスキーの定義を以下のように定めている[1]。
- スコットランドの蒸留所で造られ、大麦麦芽と水のみ(全粒ならば他の穀物を加えてもよい)を原料としたもののうち、以下の条件を満たすもの。
- その蒸留所内にてマッシュ(糖化)されたもの。
- 細胞の同化系の酵素だけを用いて、発酵可能な基質に変換(糖化)されたもの。
- 酵母(イースト)の添加のみによって発酵させたもの。
- 原料の大麦麦芽や生産の手法から得られる風味を損なわないよう、エタノ-ル濃度(アルコール度数)94.8%未満で蒸留されていること。また第4条は下限を40%と定めている。
- スコットランドの保税貯蔵庫に3年以上寝かせること。樽は700リットル以下のオーク材でなければならない。
- 原料や、生産・発酵の手法から得られる、色・香り・味を保っていること。
- 添加が許されるのは、水および色づけのためのキャラメルのみである。
スコッチ・ウイスキーの種類
スコッチ・ウイスキーはまず、モルトウイスキーとグレーンウイスキーに分かれる。両者の違いには以下のような点がある。
| 名称 | 原料 | 蒸留方法 |
|---|
| モルトウイスキー | 大麦麦芽[2] | 単式蒸留器を使用。2回行うのが一般的。[2] |
| グレーンウイスキー | トウモロコシと大麦麦芽を5:1の割合で配合[3] | 連続式蒸留機を使用して連続的に行う[4] |
モルトウイスキーは「ラウドスピリッツ(主張する酒)」[5]、「個性的で風味の豊かな」[6]と評され、グレーンウイスキーは「サイレントスピリッツ(沈黙の酒)」[5]、「風味に乏しく没個性的で、それを単体で飲むには不向き」[6]と評される。両者を混ぜて作られるのがブレンデッドウイスキーで、「適度な力強さと穏やかさを兼備」していると評される[7]。モルトウイスキー65%に対しグレーンウイスキー35%がブレンドの目安(クラシックブレンド)とされる[8]。ウイスキーのブレンドはブレンダーと呼ばれる専門家が担当し、1つのブレンデッドウイスキーを作るために数十種類のモルトウイスキーと数種類のグレーンウイスキーが混合される[9][† 3]。
モルトウイスキーは製造工程の違いにより、シングルカスク、シングルモルト、ヴァッテッドモルト(ブレンデッドモルト[10])に分類される。シングルモルトは1つの蒸留所で作られたモルトウイスキーのみを、シングルカスクは1つの樽から作られたモルトウイスキーのみを瓶詰めしたもので、ヴァッテッドモルトは複数の蒸留所で作られたモルトウイスキーを混合させて瓶詰めしたものである[4][11][12]。 単一原料のみからなるシングルモルトとは違い、単一蒸留所で蒸留されたものを差し、某メーカーでは複数のモルトを混ぜたと明記せずに販売していたこともある。
なお、ピュアモルトという言葉があるが、これはブレンデッドウイスキーとの違いを示すために「モルトウイスキーのみを瓶詰めした」という意味で用いられる[12]。シングルモルトとヴァッテッドモルトに使われる[11]が、土屋守によると「スコットランドの場合、ピュアモルトといえば、まず99%シングルモルトのことを指すと思っていい」[12]。2009年施行の改正スコッチ・ウイスキー法により、スコッチ・ウイスキーのラベルにピュアモルトと表記することは禁止されている[13][14]。
モルトウイスキーと同様、グレーンウイスキーにもシングルグレーンとヴァッテッドグレーンとがある。ただし個性の乏しいグレーンウイスキーについて製造した蒸留所の名前を強調したり混合することに意味はないと考えられており、流通量は非常に少ない[15]。
なお、ブレンデッドおよびヴァッテッドの熟成年数の表示については、混合させるウイスキーの中で最も熟成期間が短いものの年数を表示しなければならない[12]。
歴史
起源
ウイスキーの製法がスコットランドに伝わった時期は定かでないが、遅くとも12世紀から13世紀にかけてという見解が有力である[16]。製法の要の一つである蒸留技術はアイルランドからキリスト教とともに伝来したとされ[17]、パトリキウスによってもたらされたとする言い伝えもある[18]。
スコットランドにおけるウイスキーに関する現存する最も古い記録は、1494年のスコットランド財務省の記録で、「修道士ジョン・コーに8ボル[† 4]のモルトを与え、アクアヴィテ(aqua vitae)を造らしむ」という内容である[19]。アクアヴィテ[† 5]はラテン語で「生命の水」という意味で、これをゲール語で表すと「ウシュクベーハ」(uisge beatha、ウシュクは水、ベーハは生命の意)となり、そこから「ウイスキー」という英語が生まれた[20]。ウイスキーという単語に関する最古の記録は1736年にスコットランド人が書いた手紙で、1755年には英語辞典に登場した[21]。当初スコッチ・ウイスキーは薬酒として修道院が独占的に製造していたが、16世紀に宗教改革が起こり修道院が解散したことで蒸留技術が農家など民間に広まり[20]、余剰生産された大麦の換金および保存の手段として製造が盛んになった[22]。この時期のスコッチ・ウイスキーには熟成の工程がなく、蒸留したばかりの無色透明の液体が飲まれていた[23]。
密造時代
1644年、スコットランドでウイスキーに対する課税が始まった[22]。1707年、スコットランドがイングランドと合併。この合併はスコットランドという国家の消滅と評される[24]。1725年にウイスキーに対する課税が大幅に強化され(一説には15倍になったともいわれ、目的は対仏戦争の戦費の捻出にあった[24])、生産者の多くはこれに対抗して密造を行うようになった[22]。密造はハイランド地方の山奥で盛んに行われた[22]。ジャコバイトによる反乱が鎮圧された後はその残党が加わって規模が拡大し[25]、1823年に酒税法が改正され税率が引き下げられるまで続いた[26]。この改正を巡っては、当時のイギリス国王ジョージ4世が腕利きの密造業者ジョージ・スミス製造のウイスキー「ザ・グレンリベット」を愛飲したため、王が密造酒を好むことがあってはならないと判断した側近が密造の原因を断つべく税率の引き下げを決断したとも伝えられている[27]。酒税法改正後、ジョージ・スミス経営のザ・グレンリベット蒸留所(1824年)を皮切りに次々と政府公認の蒸留所が誕生した。その数は1820年代だけでおよそ250に上り、一方密造の摘発件数は激減した[28]。
地図の濃い緑がハイランド地方、薄い緑がローランド地方 現在採用されている製法の多くは、密造時代に確立された。たとえば密造酒である以上販売の時期を選ぶことができなかったため、生産者は機会が到来するまでウイスキーを樽に入れて保管することにした。その結果長期間樽の中に入れられたウイスキーが「琥珀色をした芳醇でまろやかな香味をもつ液体」へと変貌を遂げることが発見され、蒸留したウイスキーを樽の中で熟成させる工程が製造法に加わることとなった[29][23]。また、大麦麦芽を乾燥させるための燃料には、他に選択がないという理由でピート(泥炭)が使われた[30]。さらに小さな単式蒸留器(ポット・スチル)を用いて2回蒸留する製法も、この時代に考案された[31]。
連続式蒸留機の発明とスコッチ・ウイスキーの多様化
1826年、スコットランド人のロバート・スタインが連続式蒸留機を発明。これを改良したアイルランド人のイーニアス・コフィーが1831年に特許を取得した[32][33]。連続式蒸留機はコフィーの名をとってコフィー・スチル、あるいは特許を意味する英語パテントからパテント・スチルと呼ばれるようになった[33]。それまで用いられていた単式蒸留器では蒸留が終わる度に発酵もろみを投入するのに対し、連続式蒸留機では連続的に蒸留を行うことができた[34]。連続式蒸留機の登場でウイスキーの大量生産が可能となった[33]。エジンバラやグラスゴーなどローランド地方[† 6]の生産者は連続式蒸留機を積極的に活用し、さらに原料をトウモロコシなど、大麦麦芽より安価な穀物に切り替えた[† 7]。こうしてグレーンウイスキーが誕生した[6]。一方、ハイランド地方[† 6]の生産者は連続式蒸留機を採用せず、従来通り大麦麦芽を原料とし、単式蒸留器を使って蒸留する製法を維持した[6]。この製法によるスコッチ・ウイスキーをモルトウイスキーという。1853年、エジンバラの酒商アンドリュー・アッシャーが、熟成年が異なるウイスキーを混ぜ合わせることを考案[35]。その後1860年に、それまで異なるウイスキーを混合させてはならないと定めていた法律が改正され、保税貯蔵庫内であれば混合が可能となったことで、モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混合したブレンデッドウイスキーと呼ばれるスコッチウイスキーが誕生した[35]。ブレンデッドウイスキーの考案以降、「スコッチの歴史はブレンデッドの歴史」と評される[31]。
繁栄と停滞
1870年代から1880年代にかけ、ヨーロッパではフランスのブドウがフィロキセラ(英語)と呼ばれる虫によって壊滅的な被害を受け、ブドウを原料とするワインとそれを蒸留して造られるブランデーの生産が不可能となった。これをきっかけにブレンデッドウイスキーはロンドンの上流・中産階級に飲まれるようになり[36]、さらにイギリス帝国全域に普及していった[37]。1877年にグレーンウイスキー業者6社が設立したDCL社(現・ディアジオ[38])はスコッチ・ウイスキーの輸出を推し進め、ワインとブランデーの流通が再開するまでの間に世界各地に市場を確立することに成功した[39]。1890年代はスコッチ・ウイスキーの第1の繁栄期と評されるが、蒸留所の建設が相次ぎ生産過剰となったことで1898年にブレンド会社大手のパティソンズ社が倒産。その影響が業界全体に波及したことで繁栄期は終わりを迎えた[40][41]。なお19世紀後半にはガラス製品の大量生産が可能になったことにより、ウイスキーを詰める容器としてガラス瓶が定着するようになった[42]。
1905年にロンドンイズリントン地区の裁判所がグレーンウイスキーおよびそれを混ぜて作られたブレンデッドウイスキーはスコッチ・ウイスキーではないとする判断を下し生産者に衝撃を与えたが、1908年から1909年にかけて生産者の要求で開かれた王立委員会においてグレーンウイスキーおよびブレンデッドウイスキーもスコッチウイスキーであるという結論が出された[43]。現行のスコッチウイスキー法におけるスコッチ・ウイスキーの定義は、この時の結論を引き継ぐ形で定められている[44]。
ウイスキーを入れる容器の蓋には長らくコルク栓が用いられていたが、ワインと異なり瓶の中で熟成することがなく、また開栓後すぐに飲みきれるわけではないウイスキーには不向きであった。1913年、ウィリアム・ティーチャーズ社が木製頭部付きのコルク栓を、1926年にホワイトホース社が金属製のスクリューキャップを発明。この2つの発明により、ウイスキーの売り上げは飛躍的に伸びたといわれている[45]。しかしながら同時期に2度の世界大戦と世界恐慌、さらにアメリカで施行された禁酒法により被った損害も大きく、多くの蒸留所が閉鎖を余儀なくされた[46]。
第2の繁栄期 - 現在
第二次世界大戦において、イギリスはウイスキーの輸出を積極的に推し進めた。その結果アメリカ兵がスコッチ・ウイスキーを愛飲するようになり、アメリカ経済が好況を迎えた1950年代から1960年代にかけて消費量が増大した。1980年代には消費量が低迷したものの、近年はシングルモルトが好調である[47]。
スコッチ・ウイスキーはイギリスにとって5大輸出品目の一つであり、その輸出規模はおよそ200か国、6000億円を数える(スコッチ・ウイスキーのうちイギリス国内で消費されるのは1割に満たない[48])。輸出されるスコッチ・ウイスキーの種類を見ると、1990年代前半には約95%をブレンデッドウイスキーが占めていたが、2000年代後半にはシングルモルトの占める割合が15%を超えるようになった[49]。
製造工程
ウイスキーの一般的な製造工程については「ウイスキー#一般的な製法」を参照
モルトウイスキーの製造工程
製麦
製麦またはモルティングとは、大麦を発芽させて麦芽を作ることをいう[50][51][52]。エタノールは酵母と呼ばれる微生物の力を借りてデンプンから生成されるが、酵母はデンプンそのものを摂取することはできないため、デンプンをグルコースやマルトースといった糖に分解して摂取させる。大麦は発芽の際にデンプンを分解する酵素を生成する性質があり、これを利用して少しだけ大麦を発芽させてから進行を止め、十分な量のデンプンとデンプンを分解する酵素がともに麦芽中に存在する状態を作り出す[53]。この状態の麦芽をグリーンモルトという[54]。
大麦には穂の形状によって二条種、四条種、六条種などの種類があるが、モルトウイスキーの原料として使用されるのは粒が大きくデンプンを多く含む二条種である[55]。大麦には種を蒔く時期によって春小麦(ウインターバーレー)と冬小麦(スプリングバーレー)とがあるが、春小麦を用いるのが一般的である[51]。収穫[† 8]後2か月間は発芽しないので、少なくともその間は保管する必要がある[51]。水分が12%以下になるまで乾燥させると大麦を「眠り」につかせることができ、1年以上の間発芽を抑え品質を保持しつつ保管することが可能となる[56]。
キルン頂上部。パゴダ状の煙突からピートの煙が出ている(ラフロイグ蒸溜所) まず保管していた大麦種子に水を吸わせ、さらに空気に晒して呼吸を促す(浸麦)。そうすることで大麦種子を「眠り」から覚まし、発芽を促すことができる[57]。水は種子の重さの約30%に相当する量を吸わせ[58]、水分含有率を44%ほどに高める(収穫時の水分含有率は16%)[51]。浸麦は浸麦槽(スティーブ)で行われ、数時間浸した後で水を抜き、7時間ないし8時間空気に晒すという作業を繰り返す(ドライ・アンド・ウェット)[59]。
浸麦を終えた大麦種子はモルトハウスまたはモルトバーンと呼ばれる作業場のコンクリート製の床の上に広げられ、木製のシャベル(シール)を使って4時間ないし6時間おきに撹拌される。これにより均一に発芽が進行するようになる[60]。芽の長さが種子の5/8ほどの長さになったら麦芽を乾燥させて発芽を止める[61][62]。乾燥は水分が5%ほどになるまで続けられる[63]。この時、温度が高すぎると麦芽に含まれる酵素の活性が失われてしまうため、温度を上げ過ぎずに、しかも素早く乾燥させる必要があり、そのためには送風速度をコントロールすることが重要とされる[64]。乾燥のための燃料はガスや重油、炭が主で、ピート(泥炭)も用いられる[† 9][65]。ピートを使用することで「スモーキーフレーバー」と呼ばれる煙臭[† 10]が麦芽に染み込む。この煙臭は以降の製造工程でも失われることはなく、スコッチ・ウイスキーを特徴づける香りの一つとなる[66]。スモーキーフレーバーの内容はピートが掘り出された場所や深さ、炭化の進み具合、ピートを炊く時間の長さなどによって異なる[65]。
なお、かつては蒸留所が自ら製麦を行っていた(自家製麦、フロア・モルティング)が、現在ではほとんどの蒸留所がモルトスターと呼ばれる専門業者に委託している[67][† 11][† 12]。各蒸留所はモルトスターに対し製法や配合の指示を行い[68]、モルトスターはコンピューター管理された巨大な乾燥装置を使って麦芽を大量生産する[69]。キルンと呼ばれる麦芽の乾燥を行うための塔は蒸留所を象徴する建物であるが、近年実際に稼働しているものはほとんどない[61]。
醸造
醸造工程では、仕込みと発酵を行う。仕込みの工程では麦芽から麦汁が作られ、発酵の工程では麦汁に酵母を加え発酵もろみを作り出す。
仕込み
製麦の工程で乾燥させた麦芽はゴミや小石を除去した上で[70]粉砕され(粉砕された麦芽をグリストという)、マッシュタンと呼ばれる容器[† 13]の中で温水と混ぜられる[71]。すると麦芽中のデンプンに分解酵素が作用し、デンプンが糖に分解されて温水中に溶け出す[72]。この時、グリストを混ぜた後の温水の温度は分解酵素が最も活発に作用するとされる63℃ないし64℃に保たれる[71]。このようにして得られる液体を麦汁、糖液またはワート(ウォート)といい[73]、グリストと温水を混ぜて麦汁を抽出することを仕込み[74]、糖化[71][75]、またはマッシング[71]という。仕込みは3回前後繰り返される[71][72]。1回目と2回目の仕込みで得られる麦汁は発酵の工程にかけられ、3回目以降で得られる麦汁は次回の仕込み用の温水として再利用される[71][73]。
仕込みには、蒸留所が独自に確保した天然水(仕込み水)が使われる。硬水よりも軟水のほうが適しているとされるが硬水を用いた製品もあり、スコットランドで最も消費量の多いグレンモーレンジは硬水を使用している[76]。仕込み水は仕込み以外にも浸麦や加水に使われる[77][† 14]。グリストは粉砕後の粗さによって3段階に分類される(粗い順にハスク、グリッツ、フラワー)。このうちハスクはマッシュタンの底へ沈殿して濾過層となり、ウイスキーの濁りを取り除く役割を果たす。この濾過層の形成がうまくいかないと、ウイスキーの出来が落ちてしまう[71]。ハスクを2割、グリッツを7割、フラワーを1割ほどに挽き分けるのが一般的で[78]、各蒸留所はこれに微調整を加えてそれぞれの個性を出す[79]。
麦芽の搾りかすをドラフといい、蛋白質などの栄養分が残されている。ドラフは家畜用の飼料に加工される[80]。
発酵
前述のように、1、2回目の仕込みで得られた麦汁は発酵(ファーメンテーション[81])の工程にかけられる。発酵とは麦汁に酵母を加え、濃度7%前後のエタノールを含む発酵もろみ(ウォッシュ)を作り出すことをいう[82][83]。ウイスキー製造に適した酵母は数百種あるといわれ[84]、一度に200kg近い量が使用される[85]。発酵の工程に要する時間は48時間ないし70時間で[83]、時間が長いほど発酵もろみの酸味が強くなる[86]。
糖化の工程で得られた麦汁は、まず熱交換機(ヒートエクスチェンジャー、ワーツクーラー)を用いて20℃[† 15]ほどに冷却される[87]。次にウォッシュバック(発酵槽)と呼ばれる容量9000リットルないし45000リットルの容器[88]に移され、酵母が加えられる[83][89]。酵母が活動するのは1日から2日ほどの間である[90]。伝統的な酵母はエールビールの醸造に使用されるエール酵母(ブリュワーズイースト)であるが、近年はウイスキーの醸造向けに開発された酵母(ウイスキー酵母[91]、ディスティラーズ・イースト)の使用が盛んで、さらに乾燥イーストや液状イーストの使用も増えつつある[83]。酵母はエタノール以外にも様々なアルコールや酢酸エステル、エチルエステルなどのエステル、さらにはグリセロールを生成する。エステルは香りに、グリセロールは味に影響を与える[92]。
2種類の酵母を添加して発酵を行うことを混合発酵という。ウイスキー酵母とエール酵母を使って混合発酵を行った場合、香味について相乗効果が得られることが判明している[91]。エール酵母は単独で添加した場合には発酵終了直後に死滅するが、ウイスキー酵母と混合して添加した場合生存期間が長くなり、そのことによって香味が良化する[91]。
前述のように麦汁に加えた酵母が活動するのは1日から2日ほどの間であるが、酵母と入れ替わるように活動を開始するのが乳酸菌である[93]。つまり発酵の工程においては前期は酵母が、後期は乳酸菌が活発に活動するのである[94]。古賀邦正は「ウイスキー造りにおける発酵とは、酵母と乳酸菌という微生物コンビが、香味豊かな発酵もろみをつくりあげている世界なのだ」と評している[95]。乳酸菌は乳酸、エステル、フェノールを生成する[96]。発酵にかける時間が長いほど発酵もろみの酸味が増すのは、酵母による発酵が不可能な非発酵性糖をもとに乳酸菌が乳酸を生成するためである[86]。ウォッシュバックは木(具体的には北米産や南米産、シベリア産のマツなど[97])製のものとステンレス製のものとに大別することができるが、木製のウォッシュバックでは乳酸菌が活動しやすい傾向にある[83](ただし木製のウォッシュバックには温度管理や清掃がしにくいという欠点もある[98])。木製からステンレス製への転換を図ったものの、風味に違いが出ることから断念したケースもある[99]。
蒸留
概要
蒸留(ディスティレーションで[100])の工程では単式蒸留器(ポット・スチル)と呼ばれる銅製の装置を用い、発酵の工程で作られた発酵もろみからエタノール濃度約70%の蒸留液(ニューポット[101]、ニュースピリッツ[102]、ブリティッシュ・ファインスピリッツ[103])を得る[104]。蒸留は蒸留棟(スチルハウス)と呼ばれる施設で行われる[105]。
蒸留の仕組みを簡単に説明すると、発酵もろみの主成分である水とエタノールとの沸点の違い(水は100℃、エタノールは78.3℃)を利用し、エタノールを優先的に蒸発させて再び液体に戻すことでエタノールの濃度を高めていくということになる[106]。ただし前述のように発酵もろみの中にはエタノール以外のアルコールやエステルなど様々な成分も含まれている。これらについては、エタノールよりも揮発しやすい成分ほど蒸留が容易である[107]。
単式蒸留器の加熱方法には、石炭やガスによる直火炊き、単式蒸留器内部のパイプに蒸気を通す方式(蒸気蒸留方式)、加熱を単式蒸留器の外で行った後で中へ戻す特殊な方式(エクスターナル・ヒーティング)がある。直火炊きには焦げ付きやすいという欠点があり、現在の主流は蒸気蒸留方式である。しかし直火炊きにはキャラメルのような甘い香ばしさを生みだす利点もあり、直火炊きにこだわる蒸留所も存在する[108]。
エタノール濃度を十分に高めるため、蒸留は2回行われることが多い[109][110][111]。1回目の蒸留(初留[111])を行う蒸留器を初留釜またはウォッシュスチルといい[110]、初留で得られる蒸留液をローワインという[112]。2回目の蒸留(再留[111])を行う蒸留器を再留釜、ローワインスチル、またはスピリッツスチルという[110]。スコットランドでは初留釜の一部が赤く、再留釜の一部が青く塗装される[110]。再留釜は初留釜よりも小さい[110]。
初留は5時間ないし8時間かけて行われ、体積が発酵もろみの約3分の1に減少し、エタノール濃度が約3倍の21%前後に上昇したローワインが得られる[111]。初留の段階で発酵もろみに含まれるエタノールはほぼすべて気化する[111]。再留でローワインを蒸留するとエタノール濃度はさらに約3倍に上昇し、およそ70%となる[112]。発酵もろみからエタノールが気化した結果、初留釜に残された溶液をスペントウォッシュ、ポットエール、バーントエールといい、前述のドラフとともに家畜用の飼料となる[113]。
スピリッツセーフ(アードベッグ蒸留所)。向かって左側に温度計と比重計が見える 再留は前留、本留、後留の3つの段階からなり、6時間ないし8時間をかけて行われる。その内訳は前留が10分ないし30分、本留が1時間ないし2時間で、後留の時間は全体から前留と本留を差し引いた時間である[114]。前留で得られる蒸留液(フォアショッツ[115]、ヘッド[115])は揮発性と刺激性が強いために、後留で得られる蒸留液(フェインツ[115]、テール[115])は揮発性が低く味を落とす原因となる成分が多く含まれているためそれぞれ排除し、中留で得られる蒸留液(ミドル[102]、ミドルカット[103]ハート[115])のみを採集するようにする[116]。フォアショッツを排除することを前留カット、フェインツを排除することを後留カットという[117]。前留カットおよび後留カットを行うタイミングは蒸留液の内容に影響を与えるため、その判断には熟練を要する[117]。この作業を担当するのはスチルマンと呼ばれる職人で、温度計とアルコール比重計を操作することで作業を行う[118]。温度計とアルコール比重計はスピリッツセーフと呼ばれるガラス箱上の装置[† 16]の中にある。排除されたフォアショッツとフェインツは他のローワインと混ぜられ、次回の蒸留(再留)にかけられる[109]。ミドルは次の工程である熟成に備え、フィリング・ステーションと呼ばれる、樽詰め作業が行われる施設へと運ばれる。この段階でミドルはニューポット、ニュースピリッツなどと呼ばれるようになる[102]。
単式蒸留器
単式蒸留器は釜、冷却器[† 17]、釜と冷却器をつなぐパイプ(ラインアーム、ラインパイプ[110])の3つのパーツからなる、特徴的な形状をした装置である。釜で加熱され気化された発酵もろみはパイプを通って冷却器に運ばれ、そこで冷却されて再び液体(蒸留液)となる。釜の上部には、「かぶと」と呼ばれる膨らみがある[119]。単式蒸留器の容量が大きいほど、蒸留液の仕上がりは軽くなる[120]。単式蒸留器の最小容量は400ガロン(2000リットル)と法定されている[120]。
かぶとにはその形状(くびれ方)に応じて呼び名があり、ほとんどくびれのないものをストレートヘッド、くびれが1つのものをランタンヘッド、2つのものをボールヘッドという[121]。かぶとの大きさや形状、パイプの長さや角度、釜の大きさや形状など、単式蒸留器の形状は様々で、その違いが生成される蒸留液の性質の違いをもたらす[122]。釜で蒸発した成分が冷却器に運ばれる前にかぶとの壁に触れて液体となり、釜に戻ってしまうことがある(分縮)[123]。分縮され釜に戻った成分は再び蒸留されることになり、その分濃度が高くなる[123]。かぶとの表面積が大きいほど分縮の程度(分縮率)が上がり、すっきりと軽い味に仕上がることになる[124]。
ラインアームの角度もウイスキーの仕上がりに影響する。角度が上向きの場合、気化したエタノールの一部が途中で液体に戻り逆流、結果角度が下向きで逆流がない場合と比べて軽めの仕上がりになる[125]。
単式蒸留器の素材が銅であることは重要な意味を持っている。発酵もろみには硫黄成分を含み悪臭を放つチオール化合物が含まれているが、銅にはチオール化合物と反応する性質があるため、チオール化合物は蒸留の工程で蒸留液から排除される[126]。また熱効率がよく触媒効果をもつことにより、香り成分の生成などウイスキーにとって有益な反応を促進する[127]。
熟成
概要
ラック方式で静置された樽(グレンリヴェット蒸溜所) 蒸留によって得られた蒸留液(ニューポット、ニュースピリッツ、ブリティッシュ・ファインスピリッツ[103])は、フィリングステーションと呼ばれる施設で樽詰めされた上で、保税貯蔵庫(ウエアハウス[128])に貯蔵される。貯蔵中には時間の経過とともに、熟成(マチュレーション[103])と呼ばれる性質の変化が起こる。スコットランドでは3年以上の熟成期間が法定されている[129]。ただし実際は10年ないし12年にわたって品質の向上は続き[130]、法定期間よりも長く熟成されるのが一般的である[131]。モルトウイスキーの場合、18年間ないし20年間の熟成させたものが最も味わい深いとされる[132]。
まず、蒸留の工程で得たニューポットに加水し、エタノール濃度を63.5%程に下げる[133]。約60%のエタノール濃度は、ウイスキーにとって重要な意味をもつ。なぜならば蒸留後に行われる熟成の過程においてエタノールは樽の木材に含まれる、ウイスキーの品質を基礎づける高分子成分を分解する(エタノリシス)[134]が、このエタノリシスはエタノール濃度が約60%であるときにもっとも盛んになるからである[135]。
ウイスキーの貯蔵に適しているのは、「あまり気温が高くなく、湿度の高い、清澄な環境」で、「めりはりの利いた四季の変化、適度な温度変化や湿度変化があることが望ましい」とされる[136]。樽の中のウイスキーは湿度や温度の影響を受ける。例えば気温が上昇すると樽の中のウイスキーの容量が増加し樽内の気圧が上昇、その影響で揮発成分が樽の外へ蒸散する。逆に気温が低下すると樽の中のウイスキーの容量は減少し樽内の気圧が下降、樽の中へ外の空気が入り込む[137]。 前者の現象は初夏から秋口にかけて、後者の現象は晩秋から初春にかけて起こる[138]。このような気体の出入りは「ウイスキー樽は呼吸をしている」と表現される[138]。樽に隙間が生じていたり木材の乾燥が足りないと、呼吸に過不足が生じることになる[138]。
ダンネージ方式で静置された樽(オーヘントッシャン蒸溜所) ウイスキー樽の「呼吸」により樽の外へ蒸散する揮発成分の量は、1年目は年2%ないし4%、2年目以降は年1%ないし3%にのぼる。この蒸散量を「天使の分けまえ(エンジェルズ・シェア[139])」という[140]。蒸散する気体の中にはエタノールだけでなく、硫黄化合物などウイスキーの味を損なう成分も含まれており、古賀邦正によると「天使に『分けまえ』を差し上げる代わりに、暴れ馬のニューポットを品格あるウイスキーに育ててもらっている」[141]。一方、樽の外から中へ入ってくる空気(正確には空気中の酸素)はウイスキー中に溶け、そこに含まれる成分を酸化させる。この酸化をきっかけとして、ウイスキーの熟成が始まる[142]。酸素はウイスキーの色の変化にも関与しており、酸素が足りない環境で熟成されたウイスキーはどす黒く変色してしまう[143]。水分も樽を出入りしており、出入りする水分と蒸散するエタノールの量のバランスによって熟成後のエタノール濃度は変動する[144]。一般にスコッチ・ウイスキーが貯蔵・熟成される場所は湿度が高く、水分の蒸散が進みにくいため、貯蔵を続けるに従ってエタノール濃度が低下する傾向にある[145][† 18]。なお、熟成を70年ないし80年続けると500リットルの樽の中身はすべて蒸発するとされる。マッカランの蒸留所で1926年に醸造を開始した500リットルの樽入りのウイスキーを1986年に瓶詰めしたところ、25リットル余りに減少していた[146]。
樽を静置する方法には、静置した樽の上に敷いた板の上にさらに静置していくダンネージ方式と、貯蔵庫を予め複数段の床で仕切ってから静置するラック式とがあり、ダンネージ方式では3段ないし4段、ラック式では10段以上にわたって静置される[136]。いずれの方式をとる場合でも、樽は横向きに倒して静置するのが基本である。縦向きに静置した場合樽の側板に負担がかかり、中身が漏れる状態が生み出されやすい[136]。ウイスキーが入れられたパンチョンやシェリーバットの重さは600kgほどになるが、横向きにして転がすことで容易に移動・方向転換ができる[147]。なお、貯蔵庫の中は低い位置は温度変化が少なく高湿度、高い位置は温度変化が激しく低湿度な傾向にあり、もとは同質のニューポットであっても樽を静置する高さによって仕上がりに差が生じる[148][149]が、この仕上がりの違いは、段数が多く高低差の大きいラック式の貯蔵庫でとくに顕著にみられる[148][149]。ちなみに伝統的な方法では、熟成開始後に樽を静置する場所が変えられることはない[150]。
樽の中に入れられた無色透明の[109][151]ニューポットは貯蔵開始から半年ほどで淡い黄色に、2、3年で黄褐色になり[152]、さらに「明るく輝くような琥珀色」となった後、赤味を帯びる[143]。この色の変化は、樽に由来する(樽から溶け出した)成分の作用による[143]。
熟成が進むにつれ、ニューポットが持っていたエタノールの刺激的な臭いは次第に消え、熟成香と呼ばれる臭いが出てくる[152]。多くの場合、熟成による品質の向上は10年ないし12年ほど続き、それ以上向上が見込めないと判断されたウイスキーは熟成の工程を終える。「○年貯蔵」という表現は単にその期間貯蔵されたということを意味するのではなく、熟成による品質の向上がそれだけの間続いたということを意味する[153]。
樽
樽の組み立ての様子(クレイゲラキにあるスペイサイド・クーパレッジ) 樽の材料としてはブナ科コナラ属に分類される木(オーク)のうち、ホワイトオークとヨーロピアンオークが主に用いられる。近年はミズナラ(ジャパニーズオーク)にも注目が集まっている[154]。ホワイトオークは、ウイスキーの色と香味成分の形成に寄与するポリフェノールを多く含み[155]、ヨーロピアンオークのうちコモンオークはフルーティーな風味を形成するとされる[156]。
ホワイトオークとヨーロピアンオーク、ミズナラに共通するのは、泡状の柔組織(チローズ)が道管の中に詰まっていることで、それにより密閉性が高くウイスキーを長期間熟成するのに適した樽を造ることができる[157]。樽の密閉性を高めるには木材の切り出し方に工夫が必要で、柾目取りという方法がとられる。柾目取りを用いることで水分を通しやすい道管や放射組織が木材の表面に出ることを防ぐことができる[158]。また、木材は乾燥すると収縮する性質があるため、樽に加工してから収縮し隙間を生じさせないよう、加工前に十分に乾燥させるようにする[159]。さらに、乾燥による収縮度の違いから樽に歪みが生じないよう、乾燥が同程度に進んだ木材を使用するようにする[159]。木材の乾燥は数年間の自然乾燥によって行われる[160]。ウイスキーの熟成に用いられる樽は主に以下の5種類である[161]。
| 名称 | 容量[† 19] | 材質 |
|---|
| ミズナラ樽 | 約480リットル | ミズナラ(ジャパニーズオーク) |
| シェリーバット | 約480リットル | ヨーロピアンオーク(コモンオーク) |
| パンチョン | 約480リットル | ホワイトオーク |
| ホッグスヘッド | 約230リットル | ホワイトオーク |
| バーレル | 約180リットル | ホワイトオーク |
樽の容量はウイスキーの出来を左右する。容量の小さい樽はウイスキーの単位容量あたりの表面積が大きく、したがってウイスキーと接触する機会が多くなり、その木香はウイスキーに対しより強い影響を与える[162]。ただし木香の影響が強すぎるとウイスキーの出来はかえって落ちる(この現象は「樽に負ける」と表現される)[163]。一方、樽が大きすぎると熟成に時間がかかり、熟成が十分に進む前にエタノールが蒸散して風味を損なう[164]。スコットランドでは法律により、700リットルを超える容量の樽の使用は禁止されている[165]。
木香を抑えたい場合にはニューポットを注入する前に樽の内側を焼き、木香を抑える作業(チャー、ファイアリング[166])を行う[167]。チャーにはセルロース、ヘミセルロース、リグニンといった抽出成分[168](樽の木材からウイスキーに溶け出す成分[151])と香味成分を増加させる効果もある[169]。もっとも、生産者の多くはチャーがさらなる効果をもたらすと体感しているが、その解明は十分ではなく、「大切なのはわかっているが、その理由はよくわからない」のが現状である[170]。近年、火を用いないチャーの手法(煮沸、遠赤外線照射など)も開発されている[171]。
同じく木香を抑えるため、通常は新しい樽ではなく、バーボン・ウイスキーやシェリーの貯蔵に使用したことのある樽を用いる[172][173]。モルトウイスキーの熟成に用いられるのは1度使用した一空き樽(ファーストフィル[174])と2度使用した二空き樽(セカンドフィル[174])である[172]。一空き樽からは、かつて詰められていたバーボンやシェリーの風味の影響を受ける[175]。三空き樽(サードフィル[174])はグレーンウイスキーの貯蔵に、四空き樽は長期の熟成に用いられる[172]。四空き樽になると樽の木香が落ち始める[172]。五空き樽に対しては木香を取り戻すため、2度目のチャーが行われる(リチャー、ジュヴナイル[175])[172]。スコッチ・ウイスキーの貯蔵に複数回使用したことのある樽をプレーン樽、ウイスキー樽[176]、リフィル樽[177]という。1つの樽は一般に、約70年間にわたって6回ないし7回使用される[178]。樽は釘を用いずに組み立てられ[179]、熟成を行うたびに補修が施される[180]。
役割を終えた樽の木材は燻製材[179]やコースター[181]、家具[179][182]、スピーカー[183]、建築物[181]などの材料として再利用される。
熟成終了後
熟成を終えたウイスキーは加水、後熟(マリッジ[184])、低温濾過という過程を経て瓶詰めされ、出荷される。加水によりウイスキーのエタノール濃度は37%ないし43%に調整される[185]。加水しない場合もあり、これをカスクストレングスという[186]。
後熟はウイスキーを数か月ないし1年間貯蔵することをいう[187]。後熟が行われる前に、異なる樽で熟成させたウイスキーは混合(ヴァッティング)される[188]が、混合を行わなかった場合シングルカスクとなる(シングルカスクについてはその前の加水も行われない。つまりシングルカスクは「必然的にカスクストレングス」である[189])。ブレンデッドウイスキーの場合、モルトウイスキーとグレーンウイスキーをそれぞれ個別に混合させた上で両者を混合させ、樽に入れる[190]。後熟により、エタノールの刺激的な味にまろみが出る。なお、科学的には水とエタノールの混合液はまたたく間に均一化・安定化すると考えられており、後熟に数か月ないし1年間をかけることは意味がないと考えられる。この、科学的に意味がないはずの工程の存在は「後熟にひそむ謎」と呼ばれている[191]。
低温濾過(チルドフィルター[192])は、加水によりウイスキーのエタノール濃度が薄められることにより成分の一部が析出することを防ぐため、0℃近い状態で濾過を行い析出が予想される成分を除去する工程で、成分の析出によるウイスキーの濁りを指摘する消費者の声に応える形で行われている[193]。ただしこの時濾過されるのはウイスキーの香味を構成する成分である[194]。低温濾過を行わないスコッチ・ウイスキーもある[193]。
瓶詰めは、蒸留所やその親会社により行われる場合と、それらと関係のない商人が行う場合とがある。前者による製品をオフィシャル、または蒸留所元詰めという。後者の商人のうち、独自の保税貯蔵庫や瓶詰め施設をもち、蒸留所から樽ごと買い付けたウイスキーを商品化するものを瓶詰め会社またはボトラーズ・カンパニーといい、ボトラーズ・カンパニーによる製品をボトラーズ・ブランドという。一方、独自の施設を持たず、熟成までの工程を蒸留所に、瓶詰めをボトラーズ・カンパニーに委託するものをインディペンデント・カンパニーといい、インディペンデント・カンパニーによる製品をインディペンデント・ブランドという[195]。
グレーンウイスキーの製造工程
概要
グレーンウイスキーの製造工程は、多くがモルトウイスキーと同じであるが、主にモルトウイスキーと混ぜてブレンデッドウイスキーを作るために用いられることから、個性を抑えた仕上がりが目指される[3]。
原料は、主原料のトウモロコシと副原料の大麦麦芽(大麦は六条大麦が用いられることが多い[196])を5:1の割合で配合したものである[3]。これを粉砕して温水と混ぜ、高温のパイプの中に流し込む。この間に大麦麦芽に含まれるデンプン分解酵素の働きによりトウモロコシのデンプンが分解され、糖化液が生成される。この仕込み方を連続蒸煮といい、モルトウイスキーの仕込み方法と比べて原料の特徴が出にくい[3]。モルトウイスキーの仕込み方法との違いは、より高温で連続的に、短い時間で行うことにある[3]。発酵の工程で用いられる酵母には、モルトウイスキーの場合よりも発酵もろみに与える個性が弱い種類のものが選ばれる[197]。蒸留は連続式蒸留機を用いて行われ[198]、エタノール濃度約90%の蒸留液(スピリッツ)が得られる[199]。スピリッツはエタノール濃度を約60%に調整された後で樽に入れられ、熟成される[198]。グレーンウイスキーはモルトウイスキーよりもアルコールの純度が高く、熟成が早く進む[200]。熟成の間、樽は縦置きで静置されることもある(パラタイズ方式)[201]。
連続式蒸留機
連続式蒸留機は、基本的に粗留塔(モロミ塔[202]、アナライザー)と精留塔(レクティファイアー)の2つの塔からなる、高さ10数mの装置である[203]。発酵の工程を終えた温度約20℃ほどの発酵もろみ[204]は、精留塔の中を通るパイプ(ウォッシュ・パイプ)の中を通り、粗留塔に至る[205]。粗留塔の内部には数十段の棚があり、棚には無数の穴があいている。発酵もろみは棚を上から下へと落ちていくが、その際粗留塔の下部から立ち上る蒸気とぶつかる。すると発酵もろみのなかのエタノール分が蒸気に取り込まれ、蒸気パイプと呼ばれるパイプを通って精留塔へと運ばれていく。理屈としては棚の穴一つが単式蒸留器一つに相当する[206]。蒸気パイプを通って精留塔に至ったエタノールを含む蒸気は、精留塔の中を下から上へ移動する途中でウォッシュ・パイプにぶつかるが、ウォッシュ・パイプの中は温度約20℃ほどの発酵もろみが移動中であるため徐々に冷却されていき液化する。この時、純度の高いエタノールは精留塔内の高い位置に至ってエタノールを回収するためのパイプに入り、一方純度の低いエタノールはパイプに届かずに精留塔底部で回収されて再び蒸留にかけられる[204]。連続式蒸留機では発酵もろみと蒸気を供給し続ける限り永久に蒸留が行われる[204]。
飲み方
スコッチ・ウイスキーに限らず、ウイスキーにはストレート(ニート[207])、オン・ザ・ロック、ハーフロック、ハイボール、水割り、カクテル、ミスト、ホットウイスキーなど様々な飲み方が存在する[208][209]。
ストレートは「ウイスキー本来の風味を堪能できる」飲み方とされる[210]。ストレートで飲む場合、チェイサーとして水などを用意し、ウイスキーと交互に飲むことが多い[211][212]。
「香りの芸術品」と呼ばれるモルトウイスキーの場合、常温で飲むことが望ましく、氷を入れると香りが損なわれてしまう[208]。水割りについては否定的な見解もある[† 20]が、土屋守によると「割ってもバランスの崩れないしっかりとしたモルトを選び、適度の水を加える」ことで風味を堪能しやすくなることもある。ただし水とモルトウイスキーの比率が重要で、1:1(エタノール濃度が20%ほどになる)以上に水の量を増やすと風味が損なわれてしまう[208]。1:1で割ることをトワイスアップといい、ウイスキーの香りを堪能するのに最適な割合とされる[213][214]。水道水で割ることは風味を損ねるため推奨されない[208]。低温濾過を行っていないウイスキーに水を加えると成分が析出し、濁りが出ることがある[215]。
モルトウイスキーを入れる容器は、多様な飲み方ができるチューリップ型のグラスが最適とされる[216]。薄いグラスを用いると口当たりが柔らかくなりモルトウイスキー本来の風味を感じることができる。そのため風味を堪能したい場合、材質はガラスよりも薄いクリスタルが推奨され[217]、さらに手から体温が伝わらないよう、ステム(脚)のあるグラスが望ましい[217]。
スコッチ・ウイスキーは一般的に、カクテルの材料としては不向きとされる。原因の一つとして、果汁や甘いリキュールを加えることでピート香などの特徴が殺されてしまうことが挙げられる[218]。
なお、スコッチ・ウイスキーは伝統的に食前酒・食後酒として飲まれてきたが、近年は食中酒としても注目を集めている[219]。
スコッチ・ウイスキー蒸留所の地域別分布
モルトウイスキーの蒸留所
ハイランド スペイサイド アイランズ アイラ キャンベルタウン ローランド スコットランド各地にはモルトウイスキーだけで100を超える蒸留所が存在する[220]。伝統的には酒類生産免許に関する規制の違いに基づき、ハイランド、ローランド、キャンベルタウン、アイラの4地区に分類される[220]が、近年はハイランドからとくに蒸留所の数の多いスペイサイドと、オークニー諸島などの島嶼部(アイランド)を独立させ、6地区に分類する方法も採用されている[221][222][223]。2009年施行の改正スコッチ・ウイスキー法は、スペイサイドをハイランドから独立させる形でハイランド、ローランド、スペイサイド、アイラ、キャンベルタウンの5つの地域を伝統的な生産地域に定め、その保護を謳っている[13][14]。
ハイランド(Highland)
ダンディー - グリーノック(英語)間の想定線以北をハイランド地方といい、およそ40の蒸留所が存在する[224]。土屋守によると製造されるウイスキーは様々で共通する特徴を見いだすのは難しい[224]。吉村宗之によるとピートがして飲みごたえのあるものが多く、北部ほどその傾向が強い[225]。一般にハイランドは東西南北の4地区に分類される[224]。
北ハイランド
- バルブレア(Balblair)
- 1790年創業[226]。蒸留所のあるロス州エダートン村は「ピート教区」と呼ばれ、豊富なピートを使った酒の密造が盛んであった[227]。
- クライヌリッシュ (Clynelish)
- インヴァネスの北方約90kmにあるブローラという町の外れに立つ。1819年、領主の貴族が密造対策を目的に創業。1967年に新しい蒸溜所を建設し、旧蒸溜所はブローラという銘柄で製造をしていたが、1983年に閉鎖された[228]。
- ダルモア (The Dalmore)
- 1839年創業。アルネスという町の郊外にある[229]。第一次世界大戦中には接収され、対潜用機雷が製造されていたこともある[227]。
- ダルウィニー (Dalwhinnie)
- 1897年創業。1905年までストラススペイと呼ばれていた。気象観測所を兼ねていて、蒸留所のマネージャーが毎朝観測を行う。標高は326mで、スコットランドで2番目に高所にある蒸留所[230]。
- グレンモーレンジ (Glenmorangie)
- 1843年創業。ドーノック湾南岸にある。もとはビール工場であった。創業以来、釜の上部が非常に長い単式蒸留器を使用している[231]。その長さは5.13mでスコットランド最長[232]。
- グレンオード(Glen Ord)
- 1838年創業。インヴァネスの北北西20kmにある。大麦の産地であったことから密造が盛んに行われていた。かつてはオーナーが代わる度に蒸留所の名前が変わったが、現在はグレンオードで統一されている。ユナイテッド・ディスタラーズ社(英語)がドラムと呼ばれる巨大な装置による製麦や蒸気蒸留方式による蒸留を試した蒸留所としても知られる[233]。
- プルトニー(Pulteney)
- 1826年創業。スコットランド本土最北に位置する蒸留所[234]。
- ロイヤル・ブラックラ(Royal Brackla)
- 1812年創業。1835年、ウィリアム4世により蒸留所として初めてロイヤル・ワラント(王室御用達の勅許状)を与えられた。ロイヤル・ナッホガー蒸留所、グレンユーリー・ロイヤルとともにロイヤルを冠する蒸留所の一つである[235]。
- スペイサイド(Speyside)
- 1990年創業。1962年の着工からおよそ50年をかけて完成した[236]。
- ティーニニック(テナニヤック)(Teaninich)
- 1817年創業[237]。
- トマーチン(Tomatin)
- 1807年創業。スコットランド最大となる23基の単式蒸留器を備えている。1980年代に宝酒造と大倉商事が買収。日本企業がスコッチ・ウイスキーの蒸留所を買収した初の事例となった[238]。
南ハイランド
- アバフェルディ(Aberfeldy)
- 1896年創業。「ジョン・デュワー・アンド・サンズ社(英語)」が同社のブレンデッドウイスキー「デュワーズ」の原酒となるモルトウイスキーを製造するために建設した[239]。
- ブレアアソール(Blair Athol)
- 1798年創業[240]。
- ディーンストン(Deanston)
- 1965年創業。1785年に建てられたリチャード・アークライト設計の紡績工場を利用している。古い紡績工場は屋内の温度と湿度が一定保たれるよう設計されており、ウイスキーの貯蔵に向いているとされる[241]。
- エドラダワー (The Edradour)
- 1825年創業。単式蒸留器が非常に小さいことで知られ、再留釜は人間の背丈ほど。行政が認める最小サイズで、密造防止の観点からこれより小さい単式蒸留器を使用することは法律で禁止されている[242]。経営規模も小さく、従業員は3名しかいない。1週間の生産量はホグスヘッド8樽分で、これはスペイサイドの平均の約40分の1である[243]。
- グレンゴイン (Glengoyne)
- 1833年創業。かつては仕込み水を引くための小川にちなんでダムゴイン蒸留所という名であった。敷地内をハイランドとローランドの境界線であるダンディー - グリーノック間の想定線が通っているが、仕込み水を北の方角から引いてきているためハイランドに分類されるウイスキー評論家のマイケル・ジャクソンは「最も訪れる価値がある美しい蒸留所」と評している[244]。
- グレンタレット (Glenturret)
- 創業は1775年で1717年に製造していた記録が残されていることから、スコットランド最古と主張している蒸留所。パースの西方約20kmにある。19世紀後半までホッシュという名であった。いち早く敷地内にビジターセンターを設置したことで知られ、その充実度は群を抜いていると評される。生涯に2万8899匹のネズミを捕まえたギネス記録をもつウイスキーキャット、タウザーが飼われていたことで有名[245]。
- タリバーディン(Tullibardine)
- 1949年創業。近くにあるブラックフォードの村はビールの産地として有名[246]。
東ハイランド
- アードモア(Ardmore)
- 1898年創業。東ハイランドとスペイサイドとの境界線の近くにある。ウィリアム・ティーチャーズ社がブレンデッドウイスキーの原酒を製造するために建設した[247]。単式蒸留器8基は東ハイランド最大規模[248]。
- フェッターケアン(Fettercairn)
- 1824年創業。アバディーン南の大穀倉地帯にある。ホワイト&マッカイグループが所有[249]。
- グレンドロナック (Glendronach)
- 1826年創業。ハイランドとスペイサイドの境界線上に位置し、スペイサイドに分類されることもある。麦芽の一部を自家製麦によって確保し、蒸留時に単式蒸留器を石炭直火炊きで加熱するなど、19世紀前半の創業時の製造方法を守り続けている[250]。
- グレンギリー(Glen Garioch)
- 創業は1785年で、ハイランド最古の蒸留所の一つ。かつて「アバディーン州の穀物庫」と呼ばれた穀倉地帯にある。1994年にサントリーが買収した。蒸留器の冷却水を利用した温室があり、野菜や花が栽培されている[251]。
- グレングラッサ(Glenglassaugh)
- 1875年創業。1907年から1959年にかけて、ほとんどの期間操業を停止[252]。その後1986年から2008年にかけても休業した[253]。原料の大麦を自家生産している[254]。
- ノックドゥー(Knockdhu)、アンノック(An Cnok)
- 1894年創業。建てたのは多くの蒸留所を所有するユナイテッド・ディスティラーズ社の前身であるディスティラーズ・カンパニー・リミテッド社。建設後、蒸留所のあるノック村に鉄道の駅と蒸留所への引込線が設置された[255]。
- マクダフ(Macduff)
- 1962年創業。1972年にウィリアム・ローソン社が買収[256]。
- ロイヤル・ロッホナガー (Royal Lochnagar)
- 1845年創業。その3年後にヴィクトリアがすぐ近くのバルモラル城を英国王室が購入し夏の居城とした。蒸溜所のオーナーが招待状を送ったところ一家が蒸留所を訪問。その数日後に王室御用達の勅許状が与えられた[257]。
西ハイランド
- ベンネヴィス(Ben Nevis)
- 1825年創業。創業者のロング・ジョンことジョン・マクドナルドは同名のブレンデッドウイスキーの由来となった人物として知られる。1989年にニッカウヰスキーが買収[258]。
- オーバン (Oban)
- 1794年創業。オーバンはアイラ島はじめヘブリディーズ諸島への船が発着する港町。蒸留所としては珍しく、町の中心部に位置する[259]。
スペイサイド(Speyside)
ハイランド地方東部のスペイ川および「デブロン川、ロッシー川の流域をスペイサイドといい[260]、スコットランド全土の約半数、およそ50の蒸留所が存在する[261]。大麦の収穫量が多くピートが豊富な地域で、密造時代にはおよそ1000の密造所が存在した[261]。土屋守は、「スペイサイドモルトは、全モルト中で最も華やかでバランスに優れた銘酒揃い」と評している[261]。スペイモルトは全体的に華やかな甘みを有する[262]。
フォレス(Forres)]
- ベンローマック(Benromach)
- 1898年創業。以来オーナーを変えながら操業停止と再開を繰り返している[263][264]。
エルギン(Elgin)
- ベンリアック(Benriach)
- 1898年創業。2年で閉鎖され、20世紀中頃に操業を再開した。ロングモーン蒸留所と同時に建てられ、同蒸留所に隣接している[265]。
- グレンバーギ(Glenburgie)
- 1829年創業。創業当初はキルンフラットという名であった。二度の閉鎖を経つつ規模を拡大[266]。エクスターナル・ヒーティングと呼ばれる特殊な方法で単式蒸留器を加熱している[267]。
- グレンエルギン(Glen Elgin)
- 1902年創業。工事の途中でウイスキー業界が不況に見舞われ、その影響で予定よりも小規模の施設となった[268]。
- グレンロッシー(Glenlossie)
- 1876年創業。1971年、敷地内にマノックモア蒸留所が建設された[269]。
- グレンマレイ(Glen Moray)
- 1897年、ビール工場を改装して創業。まもなく創業を停止し、1920年に再開。かつて刑場であった場所に建てられており、保税貯蔵庫を建設中に頭蓋骨が出土したことがある[270]。
- リンクウッド (Linkwood)
- 1821年創業。1936年に責任者として雇われたロデリック・マッケンジーは、味が変わるのを恐れて蜘蛛の巣を払うことさえ禁じたと伝えられている[271]。
- ロングモーン (Longmorn)
- 1894年、隣接するベンリアック蒸留所と同時に創業[265]。初留釜と再留釜が別の部屋に置かれている[272]。
- マノックモア(Mannochmore)
- 1971年、グレンロッシー蒸留所の敷地内に建設される。1985年に操業が停止されたが再開[273]。
- ミルトンダフ(Miltonduff)
- 1824年創業。前身は修道院で、ビール醸造所として有名であった。もとはミルトンという名で、ファイフ伯ダフ一族が所有するようになってからミルトンダフと呼ばれるようになった[274]。かつてはローランド・スチルと呼ばれる特殊な蒸留器を用いた製造もおこなっていた[275]。
バッキー(Buckie)
- インチガワー(Inchgower)
- 1871年創業。貯蔵庫が広く、付近の蒸留所の樽も貯蔵している[276]。
キース(Keith)]
- オスロスク(Auchroisk)
- 1974年創業。広大な敷地面積(250エーカー)をもつ[277]。
- オルトモーア(Aultmore)
- 1896年創業。周辺は泥炭地で、古くから密造酒の製造が盛んであった。同業者が処理方法に苦慮していたマッシュタンの搾り滓(ドラフ)と蒸留後の残留廃液(ポットエイル)を乾燥・圧縮して資料を製造する手法を考案したことで知られ、ほとんどの蒸留所がこの手法を導入した[278]。
- グレンキース(Glen Keith)
- 1957年、ストラスアイラ蒸留所の第2蒸留所として操業を開始。アイラ川沿い、ストラスアイラ蒸留所の対岸に位置する。前身はオートミール工場。保税貯蔵庫を持たない。製造工程においては機械化が図られており、従業員は6名と少ない。ガスを用いて単式蒸留器を加熱する手法を初めて導入したことで知られる。また、1970年まで3回蒸留を行っていた[279]。
- グレントファース(Glentauchers)
- 1898年創業。ジェームズ・ブキャナンが初めて建設した蒸留所として知られる[280]。
- ストラスアイラ (Strathisla)
- 創業は1786年で、スペイサイド最古の歴史を持つ。リンネル産業が衰退したことを受け、地元の企業家がウイスキー造りに乗り出したのがきっかけであった。仕込み水の多くはブルームヒル・スプリングと呼ばれる貯水池から確保しているが、ここには近づく者を溺死させる水の妖精が現れると伝えられている[281]。
- ストラスミル(Strathmill)
- 1891年、製粉工場を改装して創業。1895年まではグレンアイラ・グレンリベット蒸留所という名であった[282]。
ローゼス(Rothes)
- グレングラント (Glen Grant)
- 184年創業。創業者の一人であるジェームズ・グラントは地元の名士で、エルギンに鉄道を建設したことでも知られる。この鉄道はグレングラントをはじめとするスペイサイドモルトの南部への大量輸送を可能にした[283]。
- グレンロセス(Glen Rothes)
- 1878年創業。ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝がウイスキーの製法を学んだ蒸留所のひとつとして知られる[284]。
- グレンスペイ(Gren Spey)
- 1884年、オートミールの工場を改装して創業。そのため1887年まではミルズ・オブ・ローゼズと呼ばれていた。ローゼズ川のほとりにあり同川の水を冷却水として用いているが、かつては上流にあるグレンロセス蒸留所が使用後の冷却水をそのまま廃棄していたため、水温が高いことに悩まされていた。その影響からグレンスペイ蒸留所の単式蒸留器には補助冷却装置が取り付けられている。ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝がウイスキーの製法を学んだ蒸留所のひとつとして知られる[285]。
- スペイバーン(Speyburn)
- 1897年、ヴィクトリア女王の在位60年に合わせて創業。処刑所の跡地に建てられており、職人の中には夜間勤務を嫌う者も出たという。正式名称はスペイバーン・リベットであるが、リベット谷にあるわけではない[286]。
ダフタウン(Dufftown)
- アルタナベーン(Alt A' Bhainne)
- 1975年創業。保税貯蔵庫がない[287]。
- バルヴェニー (Balvenie)
- 1892年、グレンフィディック蒸留所に隣接する場所で創業[288]。
- ダフタウン(Dufftown)
- 1896年、食品工場を改装して創業。生産量は年間360万リットルで、ユナイテッド・ディスタラーズ社の系列に属する蒸留所の中で最大クラス[289]。
- グレンダラン(Glendullan)
- 1898年創業。年間生産用は310万リットル[290]。
- グレンフィディック (Glenfiddich)
- 1887年創業。スコットランド最大、29基の単式蒸留器がある。蒸留所内に瓶詰め設備がある[291]。
- キニンヴィ(Kininvie)
- 1990年創業。シングルモルトの発売は過去2回(銘柄名は「ヘーゼルウッド(Hazelwood)」。ただしキニンヴィ産のシングルモルトではないヘーゼルウッドもある)しかなく、「幻のシングルモルト」と呼ばれる[292]。
- モートラック(Mortlach)
- 1823年、古くから密造が盛んであった地域に創業。年間生産量は200万リットル[293]。
リベット(Livet)
- ブレイヴァル(Braeval)
- 1973年創業。当初はブレイズ・オブ・グレンリベットという名称で、1994年にブレイヴァルに改められた[294]。標高350mの地点に建てられており、もっとも標高の高い場所に位置するスコットウイスキー蒸留所である[295]。保税貯蔵庫を持たない[296]。
- ザ・グレンリベット (The Glenlivet)
- 1824年、政府公認蒸留所の第1号として創業。創業者のジョージ・スミスは密造業者から裏切り者として命を狙われることになり、護身用に銃を携帯するようになった。この銃は現在グレンリベット蒸留所に展示されている[297]。成功を受けて同じ名称を使用する蒸留所が続出したため定冠詞つきの「ザ・グレンリベット」の名を用いるようになり[298]、さらに裁判を起こした結果「ザ・グレンリベット」だけが「グレンリベット」の名称を用いることができるようになった[297]。
- タムナヴーリン(Tamnavulin)
- 1966年創業。正式名称はタムナヴーリン・グレンリベット蒸留所。前身は紡績工場[299]。
- トミントゥール(Tomintoul)
- 1964年創業。ハイランドでもっとも標高が高い地域にある[300]。
スペイ川中流域他
- アベラワー (Aberlour)
- 1826年創業。ラワー川沿いに位置する[301]。
- バルミニック(Balmenach)
- 創業は1824年だが、それ以前から密造を行っていた。税吏の忠告を聞き入れ、認可を受けたという[302]。
- ベンリネス(Benriness)
- 1826年創業。スペイサイドでもっとも標高の高い山(840m)であるベンリネスの麓、標高213mに位置する[303]。
- カードゥ(Cardhu)
- 1811年から密造を行っていた農家が、1824年に公認を得て創業。19世紀後半に大きな経営的成功を収め、当時の経営者エリザベス・カミングは「ウィスキー産業の女王」と呼ばれた[304]。
- クラガンモア (Cragganmore)
- 1869年創業。創業者のジョン・スミスはザ・グレンリベット蒸留所の創業者ジョージ・スミスの私生児ともされ、マッカラン、ザ・グレンリベット、グレンファークラスなどのマネージャーを歴任した後、理想の蒸留所を作るべく創業した[305]。
- クライゲラキ(Craigellachie)
- 1891年創業。後にホワイトホース社の2代目社長となったピーター・マッキーが創業。マッキーはこの蒸留所で会社の年次総会を開いた[306]。
- ダルユーイン(Dailuaine)
- 1852年創業。この蒸留所の第2工場として建設されたのがインペリアル蒸留所である[307]。
- グレンアラヒー(Glenallachie)
- 1967年創業。スコティッシュ・アンド・ニューカッスル社がブレンデッドウイスキー「マッキンレー」の原酒を確保するために建設した。その後所有者は他社に移っている[308]。
- グレンファークラス (Glenfarclas)
- 1836年創業。スペイ川の中流域に位置する[309]。
- インペリアル(Imperial)
- 1897年にダルユーイン蒸留所の第2工場として創業。1900年から1955年まで約半世紀にわたって操業を停止していた[310]。
- ノッカンドオ (Knockando)
- 1898年創業。スペイ川中流域にある[311]。
- マッカラン (Macallan)
- 1824年創業。スペイ川中流域に位置し、付近は渡し場として交通の要所であった[312]。
- タムドゥー(Tamdhu)
- 1897年創業。かつて「密造者の谷」と呼ばれた場所にある[313]。
- トーモア(Tormore)
- 正式な創業年は1960年だが、生産を開始したのは1959年。スペイサイドでは20世紀になって初めて建てられた蒸留所である。アルバート・リチャードソン(英語)設計の建物は美しいと評判である。敷地内に設けられた池あ、冬にはカーリング場として使用される[314]。
ローランド(Lowland)
ダンディー - グリーノック間の想定線以南をローランド地方という[224]。かつては多くのモルトウイスキー蒸留所があったが衰退し、現在操業しているのは3箇所である。ちなみにグレーンウイスキーの生産やブレンド、麦芽製造については今なおローランドで最も盛んに行われている[315]。他の地区の2回蒸留に対し3回蒸留を伝統としていたが、現在3回蒸溜を行っているのはオーヘントッシャンのみ[316]。穏やかな風味のウイスキーが多い[317]。
- オーヘントッシャン (Auchentoshan)
- 1800年頃創業。グラスゴーの北西16kmにある。ローランドの伝統であった3回蒸溜を守り続ける唯一の蒸溜所である。第二次世界大戦中にドイツ軍の空襲により破壊され、流れ出したウイスキーで近くの川が琥珀色に染まったと伝えられている。1994年以降サントリーが所有している[318]。
- ブラッドノック (Bladnoch)
- 1817年創業。スコットランド最南端の蒸溜所。ウィグタウンにある。1930年代までは農家が副業的に操業していた。操業停止を繰り返しながら不定期に操業を続けている[319]。施設の一部をホールに改造したり敷地の一部をキャンプ場とするなど、観光客誘致に取り組んでいる[320]。
- グレンキンチー (Glenkinchie)
- 1837年創業。エディンバラの東部の農村地帯にある。ドラフ(麦芽の搾りかす)や蒸留工程で出る廃液を利用して育てられたアバディーン・アンガス牛は評価の高い肉牛である。敷地内にはウィスキー博物館があり、蒸留所の模型(1/6スケール)が展示されている[321]。
| | オーヘントッシャン蒸溜所のウォッシュバック(内部) | |
| | |
アイラ(Islay)
スコットランド屈指の美しさで知られるラフロイグ蒸溜所の建物 ヘブリディーズ諸島の最南端に位置するアイラ島には8つの蒸留所がある[322]。蒸留所は海辺に建てられており、その影響からアイラ・モルトはヨード臭がし、さらにピート由来のスモーキーさをもつ[323][317]。アイラ島は気候が温暖で大麦の栽培に適し、ピートが豊富で良質の水が手に入ることから、伝統的にウイスキー造りの盛んな地域である[324]。
- アードベッグ (Ardbeg)
- アイラ島南岸にある[325]。創業時期については密造時代の1794年とする説と、1815年とする説とがある[326]。操業停止を繰り返していた時期もあったが、1997年にグレンモーレンジ社が買収して以降は安定している[327]。製品の特徴の一つである非常に強いピート臭は換気装置のない特殊な構造のキルンで麦芽を乾燥させることによって醸成されていたが、1989年に自家製麦をやめており、その影響を懸念する声もある[326]。
- ボウモア (Bowmore)
- アイラ島の中心部にある[325]。創業年(1779年)はアイラ島最古[325]。港の近くにある蒸留所内には潮の香りが漂い、ラーガン側から引いた仕込み水からは濃いピート臭がする[325]。麦芽の3割を自家製麦により確保している[325]。1994年にサントリーがモリソン・ボウモア社から買収[328]。蒸留器の冷却水を利用した温水プールが設置されており、島民に開放されている[328]。
- ブルイックラディ(Bruichladdich)
- 1881年創業[329]。しばらく操業停止状態にあったが2001年に操業再開[330]。仕込み水のピート臭が島内の他の蒸留所と比べて軽い[329]。麦芽乾燥にピートを用いない製法を基本とするが、近年は煙香の強い製法も試みている[330]。単式蒸留器のパイプは非常に細い[329]。キルホーマン蒸留所ができるまではスコットランド最西端の蒸留所であった[331]。
- ブナハーブン(Bunnahabhain)
- アイラ島北部にある。蒸留所が立てられたのは1880年だが、オフィシャルブックによると創業は1883年[332]。単式蒸留器は玉ねぎのような形をしている[333]。麦芽乾燥にピートをほとんど用いない[333]。
- カリラ(Caol ila)
- 1846年創業[334]。ディアジオ社が運営[334]。年間生産量は300万リットルを超え、アイラ島最大[330]。
- キルホーマン(Kilchoman)
- 2005年12月に初蒸留を行った新しい蒸留所[335]。スコットランド最西端の蒸留所[336]。
- ラガヴーリン(Lagavulin)
- 1816年創業。湿地帯の中にある。仕込み水はピートの影響を強く受けており、ピートの色が濃くついている[337]。
- ラフロイグ(Laphroaig)
- 1815年創業。自家製麦を行っており、その際に苔を多く含むピートを使用するのが特徴。仕込み水の質を保つため、蒸留所周辺の土地を買い占めて羊や牛を放牧するなど環境面への配慮を行っている。蒸留所の建物の美しさはスコットランド全土でも屈指とされる。1950年代から1970年代にかけ、スコッチ・ウイスキー史上初めて女性が所長を務めたことでも知られる[338]。
キャンベルタウン(Campbeltown)
キャンベルタウンは、キンタイア半島先端にある町である。かつては30を超える蒸留所が存在し、モルトウイスキー造りの中心地であった[339]が衰退し、現在は3箇所のみとなっている[340]。禁酒時代のアメリカに向け粗悪濫造のウイスキーを密輸し、禁酒法が解除になった際に見向きもされなくなったのが大きな原因とされている[341][342]。キャンベルタウンモルトの特徴としては「香り豊かで、オイリー、塩っぽい風味を持つこと」が挙げられる[317]。
- グレンガイル (Glengyle)
- 1872年創業。1925年に閉鎖されたが2004年に操業を再開[343]。
- グレンスコシア (Glen Scotia)
- 1835年創業。1930年代に閉鎖に追い込まれ、その後再開と閉鎖を繰り返している[343]。1930年代の閉鎖時に自殺したオーナーの幽霊が出るといわれている[344]。
- スプリングバンク(Springbank)
- 1828年創業。傑出した蒸留所の一つに数えられ、シングルモルト「スプリングバンク」の12年ものは、1983年にタイムズ誌が主催した試飲会で1位を獲得している。グレンフィディック、ロッホサイドとともに瓶詰め施設をもつ数少ない蒸留所の一つである。ウイリアム・ケイデンヘッド社と同資本であるため、同社はこの蒸留所で瓶詰めを行っている[345]。麦芽はすべて自家製麦でまかなっている[346]。製法を様々にアレンジし、個性の異なる製品を生み出している[347]。
アイランズ(Islands)
アイランズとは、オークニー諸島、スカイ島、マル島、ジュラ島、アラン島にある6つの蒸留所をいう[348]。これは蒸留所が島にあるという地理的な分類であって、アイランズ・モルトに共通する特徴は見られない[348]。
- ハイランドパーク (Highland Park)
- 1795年創業。オークニー諸島メインランド島の中心地カークウォールの外れに建つ。北緯は95度で、世界最北端にあるウイスキー蒸留所である[349]。麦芽の一部を自家製麦でまかなっており、仕込み水の一部に井戸水を使用している[350]。大麦の貯蔵庫にはウイスキーキャットがいる[351]。
- アイル・オブ・アラン (Isle of Arran)
- 1995年創業。グラスゴーの西、クライド湾の中心に浮かぶアランに160年ぶりに作られた蒸留所である[352]。
- アイル・オブ・ジュラ (Isle of Jura)
- 1810年創業。ジュラ島はアイラ島の北東部にある島で、ジョージ・オーウェルが『1984年』を執筆した地として知られる。記録によると、1502年にはすでにウイスキーの密造が行われていた[353]。
- スキャパ (Scapa)
- 1885年創業[354]。およそ半世紀の操業停止を経て1963年に操業を再開[352]。ハイランドパーク蒸溜所の南西に位置する。ローモンド・スチルと呼ばれる、釜の上部が円筒形をした特殊な形をした単式蒸留器を使用している(ただしローモンド・スチルが本来持つ、釜の上部と下部から同時に加熱する仕組みは持ってない)[354]。
- タリスカー (Talisker)
- 1831年創業。インナー・ヘブリーデス諸島最大のスカイ島にある。単式蒸留器は、ラインアームが2度上下に曲がる特殊な形状をしている[355]。かつて(1928年まで)は蒸留を3回行っていた[356]。
- トバモリー(Tobermory)
- 1798年創業。スカイ島とジュラ島の中間にあるマル島の蒸留所。休業・操業を繰り返した後、1993年にバーン・スチュワート社が買収・操業を再開させた[357]。かつての経営者が貯蔵庫を売却してしまったため、貯蔵・熟成はディーンストーン蒸留所で行っている[358]。
グレーンウイスキーの蒸留所
グレーンウイスキーの生産はローランド地方で最も盛んに行われている[315]。歴史上初めてグレーンウイスキーを製造したのはキャメロンブリッジ蒸留所(Cameronbridge)である[359]。
この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。スコッチ・ウイスキーの銘柄
モルトウイスキー
シングルモルト
ハイランドモルト
北ハイランド産
- バルブレア(Balblair)
- バルブレア蒸留所製造。風味は「軽く華やか」と評される。熟成の早さが特徴の一つで、かつては5年物のオフィシャルが販売されていた[360]。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」を製造する会社が蒸留所を所有していた時期には同酒の原酒として使用されていた[361]。
- クライヌリッシュ (Clynelish)
- クライヌリッシュ蒸留所製造。シルクのようななめらかさとスパイシーさを併せ持ち、「深く静かな余韻が残る」と評される[227][362]。伝統的にスペイサイドモルトの「グレンリベット」と並び称される銘酒で、かつては供給が追い付かないほどの人気を誇った[362]。ブレンデッド・ウイスキー「ジョニー・ウォーカー」金ラベルの原酒[227]。
- ダルモア(Dalmore)
- ダルモア蒸留所製造。パワフルな風味を持ち[363]ながら、加水すると「まろやかな桃の風味」がすると評される[227]。ボトルに描かれている牡鹿はダルモア蒸留所のかつてのオーナーであったマッケンジー家の副紋章[229]。
- ダルウィニー (Dalwhinnie)
- ダルウィニー蒸留所製造。穏やかな味わいが特徴。ブレンデッドウイスキーの「ブラック&ホワイト」、「ロイヤル・ハウスホールド」の原酒[364]。年間生産量130万トンのうち、シングルモルトとして出荷されるのは5%に満たない[365]。
- グレンモーレンジ (Glenmorangie)
- グレンモーレンジ蒸留所製造。風味は複雑かつ華やかで、「香りのデパート」と評される[365]。製品はすべてシングルモルトで、ブレンド用には一切供給されていない。仕込み水は硬水で、「良質のモルトウイスキーは軟水から作られる」という常識を覆した。熟成に使用する樽はすべて自ら原木を買い付け、ケンタッキー・バーボンを詰めたバーボン樽である[366]。スコットランドで最も飲まれているシングル・モルトである[231][365]。
- グレンオード(Glen Ord)
- グレンオード蒸留所製造。マイルドな口当たりが特徴。ブレンデッドウイスキー「デュワーズ」の主要原酒[365]。
- プルトニー(Pulteney)
- プルトニー蒸留所製造。潮や海藻の香りが漂う風味が特徴[367]。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」を構成する「魔法の7柱」のひとつ[368]。
- ロイヤル・ブラックラ(Royal Brackla)
- ロイヤル・ブラックラ蒸留所製造。柑橘系の香りとラムレーズンのような甘味が特徴の食後酒[235]。
- スペイサイド(Speyside)
- スペイサイド蒸留所製造。麦芽の乾燥にピートを使用していない[236]。
- ドラムーイッシュ(Drumguish)
- スペイサイド蒸留所製造[369]。
- ティーニニック(テナニヤック)(Teaninich)
- ティーニニック(テナニヤック)蒸留所製造。風味は「華やかで厚みがある」と評される[370]。ウイスキー・リキュール「ドラムビュイ」の原酒の一つ[237]。
- トマーチン(Tomatin)
- トマーチン蒸留所製造。風味はドライでパワフル。同名のブレンデッドウイスキーもあり、そちらのほうが知名度が高い[370]。
南ハイランド産
- アバフェルディ(Aberfeldy)
- アバフェルディ蒸留所製造。まろやかで飲みやすいと評される。アバフェルディ蒸留所の近くには赤リスの生息地があり、15年物のラベルには赤リスの絵が描かれている[371]。
- ブレアアソール(Blair Athol)
- ブレアアソール蒸留所製造。清冽さとまろやかさ、ほのかな甘みを併せ持つ[243]。蒸留所の近くを流れる小川アルト・ダワー・バーンはゲール語で「カワウソの川」を意味し、ユナイテッド・ディスタラーズ社が販売するブレアアソールのラベルにはカワウソの絵が描かれている[372]。
- ディーンストン(Deanston)
- ディーンストン蒸留所製造。風味は薬品ぽい[241]。
- エドラダワー (The Edradour)
- エドラダワー蒸留所製造。香りは蜂蜜のように甘く、舌触りはとろけるようだと評される[373]。ただし、近年は化粧品のような香りがするようになったという指摘もある。シングルモルトの出荷量は年間2万4000本ほど[242][243]。
- グレンゴイン (Glengoyne)
- グレンゴイン蒸留所製造。麦芽の風味を純粋に引き出すため、乾燥にピートを全く用いない。ウイスキー評論家の土屋守によると軽さとコクを併せ持ち、加水すると和食にも合う[374]。
- グレンタレット (Glenturret)
- グレンタレット蒸留所製造。バニラ香のするオイリーでフルーティーな風味をもつ[375]。グレンタレット蒸留所で生産されるウイスキーのほとんどがシングルモルトとして出荷される[245]。
- タリバーディン(Tullibardine)
- リバーディン蒸留所製造。ソフトでフルーティー。仕込み水の水源はミネラルウォーター「ハイランド・スプリング」と同じ。
東ハイランド産
- アードモア(Ardmore)
- アードモア蒸留所製造。飲み口はソフトで風味に甘味がある。蒸留所を所有するウィリアム・ティーチャーズ&サンズ社のブレンデッドウイスキー「ティーチャーズ・ハイランド・クリーム(英語)」、「ティーチャーズ・ロイヤル・ハイランド」などの原酒[376]。
- フェッターケアン(Fettercairn)
- フェッターケアン蒸留所製造。ヘーゼルナッツのような風味が特徴。蒸留所を所有するホワイト&マッカイグループのブレンデッドウイスキー「ホワイト&マッカイ」の原酒[377]。
- グレンカダム(Glencadam)
- 操業停止中のグレンカダム蒸留所製造。風味はクリーミー。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」や「スチュワート・クリーム・オブ・バーレイ」の原酒として用いられている。流通量は少ない[378]。
- グレンドロナック (Glendronach)
- グレンドロナック蒸留所製造。華やかと評される風味が特徴。かつては熟成をシェリー樽で行ったものとバーボン樽の一空き樽で行ったものの2種類を販売していたが、現在は両者をヴァッティングさせたものが主力[379]。ブレンデッドウイスキー「ティーチャーズ」のメイン原酒[248]。
- グレンギリー(Glen Garioch)
- グレンギリー蒸留所製造。バニラ、ナッツ、バーブとかすかなピート臭いがする[252]、個性的なモルトと評される[380]。
- グレングラッサ
- グレングラッサ蒸留所製造。その風味はリンネルやリノリウムにたとえられる。ブレンデッドウイスキー「フェイマス・グラウス」や「カティサーク」、「ラングス」の原酒として用いられている。シングルモルトの流通量は少ない[381]。
- ノックドゥー(Knockdhu)、アンノック(An Cnok)
- ノックドゥー蒸留所製造。ディスティラーズ・カンパニー・リミテッド社時代にはブレンデッドウイスキー「ヘイグ」の原酒として生産されておりシングルモルトは流通していなかったが、1989年にオーナーが代わってから販売されるようになったノックドゥーはノッカンドオ、カードゥと混同されがちなため、1993年以降はアンノックという商品名を使用している。風味は濃厚かつパワフルと評される[382]。
- マクダフ(Macduff)
- マクダフ蒸留所製造。麦芽の風味がする。1972年にウィリアム・ローソン社が買収して以降、同社のブレンデッドウイスキー「ウィリアム・ローソンズ」の原酒に用いられている[383]。
- ロイヤル・ロッホナガー (Royal Lochnagar)
- ロイヤル・ロッホナガー蒸留所製造。ペパーミント系の濃厚な香りとクリーミーな味が特徴。生産されるウイスキーのほとんどはブレンデッドウイスキー「Vat 69(英語)」や「ジョン・べグ・ブルーキャップ」などの原酒に用いられている。ヴィクトリア女王はボルドー産のワインにロイヤル・ロッホナガーを数滴混ぜて飲むのを好んだという[384]。
西ハイランド産
- ベンネヴィス(Ben Nevis)
- ベンネヴィス蒸留所製造。ウォッシュチーズのような香りが加水によりフローラルな香りに変化する[259]。
- オーバン (Oban)
- オーバン蒸留所製造。ハイランドとアイラ・モルトの中間のような性格で、絶妙なバランスをもつと評される[385]。
スペイサイドモルト
フォレス産
- ベンローマック(Benromach)
- フォレス地区、ベンローマック蒸留所製造。フレッシュかつ繊細、リッチな風味をもつ。熟成にはジャック・ダニエルのバーボン樽かオロロソシェリーの樽を使用している[259]。
エルギン産
- ベンリアック(Benriach)
- ベンリアック蒸留所製造。トフィーのような甘さが特徴。ブレンデッドウイスキーの「クィーン・アン」、「サムシング・スペシャル」の原酒。オフィシャルは1994年に初めて発売された。大麦麦芽の一部を自家製麦でまかなっている[386]。
- グレンバーギ(Glenburgie)
- グレンバーギ蒸留所製造。ラムレーズンのような香りとバニラのような味が特徴[387]。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」に用いられ、同酒を構成する「魔法の7柱」のひとつに数えられる[388]。仕込み水の確保に苦労していることから生産量は少ない[266]。
- グレンエルギン(Glen Elgin)
- グレンエルギン蒸留所製造。ソフトな口当たりが特徴。蒸留所をホワイトホース社が所有している関係からホワイトホースの原酒として使用されている。かつては12年物のオフィシャルボトルのラベルに白馬が描かれていた[389]。
- グレンロッシー(Glenlossie)
- グレンロッシー蒸留所製造。白檀のような香りが特徴。グレンロッシー蒸留所の再留釜のラインアームには精留器が取り付けられており、これによりエタノール濃度が高く口当たりの軽いニュースピリッツが作られる。ブレンデッドウイスキーの「ヘイグ」と「ディンプル」の主要原酒[390]。
- グレンマレイ(Glen Moray)
- グレンマレイ蒸留所製造。かつてはブレンデッドウイスキーの原酒として評価が高かった半面個性に乏しかったが、1999年に白ワイン樽を熟に用いるようになってから個性の弱さが払拭されたと評されている[272][391]。
- リンクウッド (Linkwood)
- リンクウッド蒸留所製造。軽くまろやかで飲みやすく、伝統的に「入手できる最上のモルトの一つ」と評されている[392]。蒸留所敷地内の池に白鳥が飛来することにちなみ、ラベルには白鳥が描かれている[272]。
- ロングモーン (Longmorn)
- ロングモーン蒸留所製造。ラム酒のような香りとドライでスパイシーな味が特徴で、ブレンデッドウイスキーの原酒としてマッカランやグレンファーに匹敵する評価を得ている。ブレンデッドウイスキーの「クィーンアン」や「サムシングスペシャル」の原酒として用いられている[393]。
- マノックモア(Mannochmore)
- マノックモア蒸留所製造。色がレモンのように薄い。大麦麦芽と仕込み水はグレンロッシーと同じものが用いられており、グレンロッシーと同様にブレンデッドウイスキーの「ヘイグ」と「ディンプル」の主要原酒として用いられている。ただし、マノックモアの再留器には精留器が取り付けられていない[394]。
- ミルトンダフ(Miltonduff)
- ミルトンダフ蒸留所製造。軽く洗練された風味が持ち味。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」を構成する「魔法の7柱」のひとつ[395]。
バッキー産
- インチガワー(Inchgower)
- バッキー地区、インチガワー蒸留所製造。チョコレートの香りと塩辛さが特徴[396]。インチガワー蒸留所を所有しているのはアーサー・ベル&サンズ社で、同社のブレンデッドウイスキー「ベル」の原酒としても使用されている[276]。
キース産
- シングルトン(Singleton)
- オスロスク蒸留所製造。豊かな香りとまろやかな味をもつ。多くのシングルモルトの銘柄名は蒸留所名と同じであるが、オスロスクという語の発音はスコットランド人以外には難しいため、発音しやすいようこの名がつけられた。熟成にはシェリー樽で熟成したものとバーボン樽で熟成したものとを混合してさらに2年間熟成っ冴える手法(ダブル・マリッジ)が用いられている。仕込み水は大変質の高い軟水[397]。
- オルトモーア(Aultmore)
- オルトモーア蒸留所製造。果実のような風味とドライな味が特徴で、第一級の食前酒と評される。ブレンデッドウイスキー「デュワーズ」と「ロバート・ハーベイ」の原酒[398]。
- グレンキース(Glen Keith)
- グレンキース蒸留所製造。リンゴあるいは洋梨の風味を持つ。かつてはすべてブレンデッドウイスキーの製造に用いられ、オフィシャルのシングルモルトの発売が開始されたのは1994年のことである[279]。
- グレントファース(Glentauchers)
- グレントファース蒸留所製造。フィノシェリーまたはバナナのような香りを持ち、コクがある。ブレンデッドウイスキー「ブラック&ホワイト」や「ロイヤルハウスホールド」の原酒。オフィシャルボトルは発売されていない[399]。
- ストラスアイラ (Strathisla)
- ストラスアイラ蒸留所製造。熟したリンゴの香りが特徴の食後酒。ブレンデッドウイスキー「シーバス・リーガル(英語)」の主要な原酒の一つ[281]。
- ストラスミル(Strathmill)
- ストラスミル蒸留所製造。熟した果実のような香りと、スパイシーで鋭い味を持つ。ほとんどが「J&B」などのブレンデッドウイスキーの原酒として用いられるため、シングルモルトはほとんど流通していない[400]。
ローゼス産
- グレングラント (Glen Grant)
- グレングラント蒸留所製造。ラベルには同蒸留所の創業者であるグラント兄弟の肖像が描かれている。5年ものから40年ものまで、様々な熟成期間を経たボトルが流通しており、「グレングラントを集めただけでバーが開ける」といわれる。イタリアでのシェアはスコッチ・ウイスキー中最大で、同国ではシングルモルトといえばグレングラントの5年物を指す。世界全体での売り上げはシングルモルト中第2位。スコッチ・ウイスキー史上初めて発売されたシングルモルトであり、また初めてスコットランド以外で発売されたスコッチ・ウイスキーでもある。仕込み水にはピートの影響が強く出ており、グレングラントそのものよりも黒いといわれるほど黒い。風味はソフトで軽い[401]。
- グレンロセス(Glen Rothes)
- グレンロセス蒸留所製造。ピート臭が強く、加水すると淡い甘みが出る。ブレンデッドウイスキーの原酒として評価が高く、ブレンデッドウイスキー「カティサーク」の主要な原酒である[402]。
- グレンスペイ(Gren Spey)
- グレンスペイ蒸留所製造。草のような風味を持つ。ブレンデッドウイスキーの「J&B」や「スペイロイヤル」、ヴァッテッドモルトの「ストラススペイ」の主要な原酒である。シングルモルトの流通量は非常に少ない[403]。
- スペイバーン(Speyburn)
- スペイバーン蒸留所製造。風味はドライ、ライト、シャープと評される。1991年にインバーハウス社が蒸留所を所有するようになってから安価な10年物が流通するようになった[404]。
ダフタウン産
- アルタナベーン(Alt A' Bhainne)
- アルタナベーン蒸留所製造。ほとんどがブレンデッドウイスキー「シーバス・リーガル」などの原酒として使用されるため、シングルモルトの流通量は非常に少ない[405]。
- バルヴェニー (Balvenie)
- バルヴェニー蒸留所製造。ふくよかでコクのある風味が特徴。スペイサイドだけでなく、全モルトウイスキーを代表する銘柄の一つ。大麦麦芽や仕込み水は隣接するグレンフィディックと同じものを使いながら、仕上がりは大きく異なる。大麦麦芽の一部は自家栽培、自家製麦したものである。新樽とフィノシェリーで熟成させたものを混ぜ、オロロソシェリーの樽で熟成させるという製法がとられている[406]。
- ダフタウン(Dufftown)
- ダフタウン蒸留所製造。生産されたうちの99%がブレンデッドウイスキーに用いられるため、シングルモルトの流通量は非常に少ない。風味は軽くドライ[407]。
- グレンダラン(Glendullan)
- グレンダラン蒸留所製造。風味は軽くフルーティー。ブレンデッドウイスキー「オールド・パー」の主要な原酒。エドワード7世が愛飲したことで知られる[290]。
- グレンフィディック (Glenfiddich)
- グレンフィディック蒸留所製造。1960年、ブレンデッドウイスキー用に生産していたウイスキーをシングルモルトとして発売。当初同業者の物笑いの種となった試みは見事成功し、「世界で一番飲まれているシングルモルト」となった。世界全体でのシェアはおよそ35%にのぼる[291]。
- モートラック(Mortlach)
- モートラック蒸留所製造。フルーツ香がする。ブレンデッドウイスキー「ジョニー・ウォーカー」の原酒[408]。
- ピティヴェアック(Pittyvaich)
- 操業停止中のピティヴェアック蒸留所製造。ダフタウン蒸留所に似せて作られた施設を用いて生産されているにもかかわらず、仕上がりはダフタウンと大きく異なる。風味はスパイシー[409]。
リベット産
- ブレイヴァル(Braeval)
- 甘い香りとまろやかさが特徴。オフィシャルは流通していない[410]。
- ザ・グレンリベット (The Glenlivet)
- ザ・グレンリベット蒸留所製造。花のような香りと深みのある味わいが特徴。熟成工程の3分の1をシェリー樽を用いて行う[411]。
- タムナヴーリン(Tamnavulin)
- タムナヴーリン蒸留所製造。リベット地区で作られるシングルモルトの中で最も口当たりが軽いとされる[412]。
- トミントゥール(Tomintoul)
- トミントゥール蒸留所製造。リキュールのような甘さをもち、加水するとルバーブのような香りがする。スペイサイドモルトの中でも最も口当たりがウイスキーの一つ[413]。
スペイ川中流域他産
- アベラワー (Aberlour)
- アベラワー蒸留所製造。ラムレーズン、バニラエッセンスのような香りが特徴。1986年に国際ワイン&スピリッツ大会で金賞を受賞。この時、かつて仕込み水を汲んでいた聖ダンスタンの枯れ井戸から水が湧いたという逸話がある[414]。熟成中のウイスキーにバグパイプを聴かせていたこともある[301]。
- バルミニック(Balmenach)
- バルミニック蒸留所製造。ヘザーハニーの香りと、ドライな味が特徴[415]。
- ベンリネス(Benriness)
- ベンリネス蒸留所製造。蒸留の際、発酵もろみの一部を3回蒸留することで軽い仕上がりを引き出している[416]。
- カードゥ(Cardhu)
- カードゥ蒸留所製造。飲み口は軽く甘い。ジョニー・ウォーカーの主要な原酒のひとつ[417]。
- クラガンモア (Cragganmore)
- クラガンモア蒸留所製造。香り豊かで飲む口はソフト。ブレンデッドウイスキー「オールド・パー」の主要な原酒[418]。
- クライゲラキ(Craigellachie)
- クライゲラキ蒸留所製造。フルーティーな風味をもつ。ブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」の主要な原酒。シングルモルトとして流通するのは全生産量の1%ほどである[419]。
- ダルユーイン(Dailuaine)
- ダルユーイン蒸留所製造。ドライでホット、スパイシーな風味が特徴[420]。
- グレンアラヒー(Glenallachie)
- グレンアラヒー蒸留所製造。軽い香りが特徴。キャンベル社のブレンデッドウイスキー「クラン・キャンベル」、「キングス・ランサム」、「ハウス・オブ・ローズ」などの原酒である[421]。
- グレンファークラス (Glenfarclas)
- グレンファークラス蒸留所製造。甘さとピートの煙臭を併せ持つ。熟成にはシェリー樽を用いている。モルトウイスキーの愛好家として知られたサッチャー元首相は、105プルーフ(エタノール濃度60%以上)を愛飲していると公言していた[422]。
- インペリアル(Imperial)
- インペリアル蒸留所製造。香りは軽く、味わいは穏やか。オフォシャルのシングルモルトは販売されていない[310]。
- ノッカンドオ (Knockando)
- ノッカンドオ蒸留所製造。ラム酒のような香りを持つ。熟成が完了したウイスキーのみ瓶詰めする方針がとられており、ボトルには熟成年数ではなく蒸留年と瓶詰が行われた年が明記されている。12年ないし15年物が多い。ブレンデッドウイスキー「J&B」の主要原酒[423]。
- マッカラン (Macallan)
- マッカラン蒸留所製造。シェリー香りと、コンソメスープにたとえられる果実の味わいが特徴[312]。ブレンデッド用のモルトウイスキーとして高い評価を得ており、「シングルモルトのロールスロイス」との評価もある。熟成に使うシェリー(ドライ・オロロソ)樽を自ら製造し、シェリー酒業者に無償提供することで確保している[424]。
- タムドゥー(Tamdhu)
- タムドゥー蒸留所製造。香りはおとなしく味わいはまろやか。麦芽の自給率は100%である。ブレンデッドウイスキー「フェイマスグラウス」の主要原酒[425]。
- トーモア(Tormore)
- トーモア蒸留所製造。軽さと華やかな甘さを併せ持つ。蒸留所の職人はその味を「現代風モルト」と評している。ブレンデッドウイスキー「ロングジョン」の原酒[314]。
ローランドモルト
- オーヘントッシャン (Auchentoshan)
- オーヘントッシャン蒸留所製造。前述のようにスコッチ・ウイスキーの中で唯一、3回の蒸留行われる。そうすることでアルコールの純度が高くなり、柔らかくクセがない風味に仕上がる。ハイランドモルトと比べ「やや個性に乏しい」とも評される。2回目の蒸留を後留といい、初留、後留、再留にはそれぞれ1時間、5時間、9時間がかけられる[318]。
- ブラッドノック (Bladnoch)
- ブラッドノック蒸留所製造。風味はデリケートで、「ローランドモルトにしては骨太でビッグ」と評される[319]。
- グレンキンチー (Glenkinchie)
- グレンキンチー蒸留所製造。軽くドライでかつ香り豊かと評される[426]。かつてはラマルミュアーの丘陵地の泉の水とキンチー川の水を仕込み水に使っていた[426]が、水質汚染の懸念から現在は前者のみを使用している[427]。
- リトルミル(Littlemill)
- リトルミル蒸留所製造。同蒸留所は操業停止中。色合いは白ワインに[428]、香りは濡れた段ボールやオートミールにたとえられる[429]。
- ローズバンク(Rosebank)
- ローズバンク蒸留所製造。同蒸留所は1993年に操業を停止している。オーヘントッシャンと同様、3回蒸留が特徴の一つで、かつての8年もののラベルには3つの単式蒸留器が描かれていた。上水道(水源はキャロン・バレー貯水池)の水を仕込み水にしている[430]。
アイラモルト
現在稼働している8つの蒸留所のほか、1983年に閉鎖されたポートエレン産のウイスキーも市場に流通している[431]。前述のように蒸留所が海辺に建てられている影響からヨード臭がし、さらにピート由来のスモーキーさをもつ[323]。有名なブレンデッドウイスキーには少なくとも5%のアイラ・モルトが混ぜられているといわれる[432]。北部で製造されたものは風味が重く、南部で製造されたものは軽い傾向にある[433]。
- アードベッグ(Ardbeg)
- アードベッグ蒸留所製造。ピートの煙臭の濃度は全モルト中最高の50-55ppm[325]。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」に用いられ、同酒を構成する「魔法の7柱」のひとつに数えられる[434]。モルトウイスキーとしての流通量は少ない[435]。
- ボウモア(Bowmore)
- ボウモア蒸留所製造。食後酒として飲まれる[325]。シェリー樽由来の香りとハーブ様の香り、酸味を含む煙香があいまった風味をもち、アイラモルトの中では中間的な重さをもつとされる[325]。日本のサントリーが資本参加している。
- ブルイックラディ(Bruichladdich)
- ブルイックラディ蒸留所製造。アイラモルトの中では仕込み水のピート臭が軽く、さらに釜の上部が非常に細い単式蒸留器を用いて製造されることから、軽くドライでクリーンな風味を基本とする[329]。ただし近年煙香が強め(40ppm)の製品も試作されている[330]。
- ブナハーブン(Bunnahabhain)
- ブナハーブン蒸留所製造。仕込み水のピート臭が軽く、さらに麦芽乾燥にピートをほとんど用いないことからピートの煙臭は控え目で、アイラモルトの中で最も軽いとされる[333]。アメリカで人気が高い[330][332]。ジョージ・ブッシュ(父)が大統領であった当時、ホワイトハウスのパーティで必ず供されたと伝えられる[330][332]。かつてエジンバラのスコッチ・ウィスキー・ヘリテージ・センター(ウイスキー博物館)土産物コーナーで最もよく売れるウィスキーであったという[332]。ブレンデッドウイスキー「カティサーク(英語)」や「フェイマスグラウス(英語)」[436]、「ブラックボトル(英語)」[330]の原酒の一つ。
- カリラ(Caol ila)
- カリラ蒸留所製造。煙香とヨード香が強く、辛みをもつのが特徴[334]。もともとは専らジョニーウォーカーなどディアジオ社が製造するブレンデッドウイスキーの原酒として生産され、モルトウイスキーは入手困難であったが、1989年にオフィシャルが発売され流通するようになった[437]。
- キルホーマン(Kilchoman)
- キルホーマン蒸留所製造。初蒸留は2005年12月[335]。
- ラガヴーリン(Lagavulin)
- ラガヴーリン蒸留所製造。アイラモルトの特徴であるピートの煙臭とヨード臭に加え、なめらかさを併せ持つ。ブレンデッドウイスキー「ホワイトホース」の原酒で、オフィシャルも発売されている(16年物が主流)。ホワイトホースを販売するホワイトホース者の創業者ピーター・マッキーはラガヴーリン蒸留所でウイスキーの製法を学んだ[438]。
- ラフロイグ(Laphroaig)
- ラフロイグ蒸留所製造。テネシー産バーボンのファーストフィルを使って熟成される。その風味は薬品、消毒液、タールにたとえられることがあり、好みが分かれるとされる。世界各地の免税コーナーでの売れ行きが最もよいモルトウイスキーである。チャールズ皇太子愛飲の酒としても知られ、シングルモルトとして初めてプリンス・オブ・ウェールズ御用達の勅許状が与えられた[439]。
- ポートエレン(Port Ellen)
- ポートエレン蒸留所製造。同蒸留所は1983年に操業を停止しモルトスターに転業したが、製造されたシングルモルトの在庫は残されている[440]。風味はドライでピートの煙香がする[441]。
キャンベルタウンモルト
- スプリングバンク(Springbank)
- スプリングバンク蒸留所製造。全てのモルトウイスキーの中で最も塩味が強いと評される[442]。発酵もろみの一部について蒸留を3回行う。前述のように本酒の12年ものは、1983年にタイムズ誌が主催した試飲会で1位を獲得している[443]。「ウエスト・ハイランド」の銘がついた商品は希少価値が大変高いことで知られる[444]。
- ロングロウ(Longrow)
- スプリングバンク蒸留所製造。名はかつてキャンベルタウンにあった蒸留所から。蒸留は2回で、麦芽の乾燥をピートのみを燃料に用いて行い[347]、スプリングバンクと比べてピートの煙臭が強い[445]。
- ヘーゼルバーン(Hazelburn)
- スプリングバンク蒸留所製造。名はかつてキャンベルタウンにあった蒸留所から。蒸留は3回で、麦芽乾燥にピートを一切用いない[347]。
- キルケラン (Kilkellan)
- グレンガイル蒸留所製造。本酒を用いたブレンデッドウイスキーに「ミッチェルズ」がある[343]。
- グレンスコシア (Glen Scotia)
- グレンスコシア蒸留所製造。ふくよかで甘い味をもち、かすかにピートの煙臭がする[446]。
アイランズモルト
前述のようにアイランズは蒸留所が島にあるという地理的な要素に基づく分類であることから、アイランズ・モルトに共通する特徴は見られない[348]。
- ハイランドパーク (Highland Park)
- ハイランドパーク蒸留所製造。シェリー香とかすかなピートの煙香、ドライさのバランスのよさが持ち味[441]。ウイスキー評論家のマイケル・ジャクソンは本酒を「全モルトウイスキー中、もっともオールラウンダーで秀逸な食後酒」と評する。19世紀後半に高い評価を得るようになった[349]ブレンデッドウイスキー「フェイマス・グラウス」の原酒の一つ[351]。
- アイル・オブ・アラン (Isle of Arran)
- アイル・オブ・アラン蒸留所製造。麦芽の甘さとフレッシュさ、クリーミーさを併せもつ風味が特徴。加水するとスパイシーさに加え、かすかなほろ苦さが出る[352]。
- アイル・オブ・ジュラ (Isle of Jura)
- アイル・オブ・ジュラ蒸留所製造。麦芽の乾燥にピートを全く用いない。風味は甘口で軽い[352]。
- スキャパ (Scapa)
- スキャパ蒸留所製造。ラムレーズンやバニラエッセンスにたとえられる濃厚な香りが特徴で、加水するとフルーティーな甘い香りに変化するという。ピートの影響でチョコレートのような色をした仕込み水を使用。また、麦芽を乾燥させる際にピートを全く使用しない[354]。ブレンデッドウイスキー「バランタイン」に用いられ、同酒を構成する「魔法の7柱」のひとつに数えられる[447]。
- タリスカー (Talisker)
- タリスカー蒸留所製造。特徴は「舌の上で爆発するような」、「強い胡椒風味」[355]。
- レデイグ(Ledaig)
- トバモリー蒸留所製造。蒸留所がバーン・スチュワート社に買収されてから販売されるようになった。ビートの煙臭いが強いのが特徴とされる[357]。
- トバモリー(Tobermory)
- トバモリー蒸留所製造。レデイグと異なり、麦芽乾燥の燃料にピートを使用しない。ヨード臭と塩味が特徴[357]。なお、「トバモリー」とは、かつてはトバモリーのシングルモルトに、ジュラ島やスカイ島のシングルモルトをヴァッティングさせた商品の名称であった[356]。
ヴァッテッドモルト
- ベリーズ・オール・モルト(Berry's All Malt)
- ベリー・ブラザーズ&ラッド社製造[448]。
- ブレアモア(Blairmhoe)
- カーマイケル・アンド・サンズ社製造。15種類以上のモルトウイスキーをヴァッティング[448]。
- チーフティンズ・チョイス(Chieftain's Choice)
- スコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社製造。熟成期間が12年以上のモルトウイスキーだけをヴァッティング[448]。
- グレントロミー(Glentoromie)
- 西ハイランド、スペイサイド蒸留所製造[236]。
- グレン・タナー(Glen Turner)
- グレン・タナー・ブレンディング社製造。ヴァッティングのためにおよそ100の蒸留所と契約をしている[449]。
- オーブライアン・スペシャルルザーブ(O'BRIAN Special Reserve)
- ファースト・ブレンディング社製造。ヨーロッパで人気のある商品。8年物、12年物、15年物がある[449]。
- オールド・セント・アンドリュース・バレル(Old St,Andrews Barrel)
- オールド・セント・アンドリュース社製造。容器はオーク樽の形をしている[449]。
- ジ・インヴァーアラン(The Inverallan)
- インヴァーアラン社製造[449]。
- ポッチ・ゴー(Poit Dhubh)
- プラバン・ナ・リンネ社製造。ポッチ・ゴーはかつて密造に用いられた黒色の単式蒸留器を指す。冷却や低温濾過を行わない製法を採用している[448]。
- ストラスアイラ12年(Strathisla Aged 12years)
- ストラスアイラ・ディスティラリー社製造。原酒はスペイサイド最古の歴史を持つストラスアイラ蒸留所製造[450]。
ブレンデッドウイスキー
- アスコットハウス(Ascot House)
- レッド・ライオン・ブレンディング社製造。アイラモルトを中心にブレンド。日本でのみ販売されている[451]。
- アウォード(Award)
- ウィリアム・ガウ社製造[451]。
- バランタイン (Ballantine's)
- ジョージ・バランタイン&サン社製造。ミルトンダフ、グレンリベット、アードモア、グレンバギー、グレンタッチャー、トーモア、グレンカダム、ラフロイグなど40種類以上のモルトと、4種類のグレーンがブレンドされている。味わいはソフトで甘い。売り上げは全ブレンデッドウイスキー中第3位[452]。
- バークレイ(Barclays)
- バーン・スチュワート社製造[453]。
- ベル(Bell's)
- アーサー・ベル&サンズ社製造。原酒はブレアアソールなど30以上[454]。イギリスで最も販売量が多いブレンデッドウイスキー[453]。
- ベン・ネヴィス(Ben Nevis)
- ベン・ネヴィス社製造。銘柄の由来は「聖なる山」と呼ばれるベン・ネビス山から[453]。
- ベリーズ(Berry's Best)
- ベリー・ブラザーズ&ラッド社製造[453]。
- ブルー・ハンガー(Blue Hanger)
- ベリー・ブラザーズ&ラッド社製造[453]。
- チーフテンズ・チョイス(Chieftains's Choice)
- スコティッシュ・インデペンデント・ディスティラーズ社製造[455]。
- シーバス・リーガル(Chivas Regal)
- シーバス・ブラザーズ社製造。スコッチ・ウイスキーのプリンスと称される[456][457]。主要モルトはストラスアイラ[457]。
- クレイモア(Claymore)
- A・ファーガソン&カンパニー製造[455]。
- クリテリオン(Criterion)
- 「判決の基準」を意味ずる。インヴァーゴードン・ディスティラーズ社製造[455]。
- カティサーク (Cutty Sark)
- ベリー・ブラザーズ&ラッド社製造。銘柄名は帆船カティサークから。スコッチ・ウイスキーの中でも有数とされる軽い味わいが特徴。主な原酒はグレンロセス[458][459]。
- ダンファイフ(Dunfife)
- ウイリアム・マックスウェル社製造[455]。
- デュワーズ(Dewar's)
- ジョン・デュワー&サンズ社製造。アバフェルディを中心に多くのハイランドモルトがブレンドされている。味わいはマイルドでスパイシー[460]。
- エジンバラ(Edinburgh)
- インヴァーゴードン・ディスティラーズ社製造[455]。
- フェイマス・グラウス(The Famous Grouse)
- マシュー・グローヴ&サン社製造。ラベルにはスコットランドの国鳥であるライチョウ(Grouse)が描かれている。スコットランドをはじめイギリスでの人気は高く、1、2を争うといわれるほど。マッカラン、ハイランドパークなど40種類以上のモルトが用いられている[461]。
- フィンドレーター(Findlater's)
- フィンドレーター製造[462]。
- グレン・スタッグ(Glen Stag)
- グレン・タラ社製造[462]。
- ゴールデンランド(Goldenland)
- インターコンチネンタル・バッカンディー社製造[462]。
- ゴードンハイランダーズ(The Gordon Highlanders)
- ウイリアム・グラント&サンズ社製造。銘柄名は同社と関係が深いザ・ゴードン・ハイランダーズ連隊に由来し、同連隊の公式ウイスキーに認定されている。原酒はグレンフィディックなど[463]。
- グランツ(Grant's)
- ウイリアム・グラント&サンズ社製造。グレンフィディック、バルヴィニー、キニンヴィーなど20種類以上のモルトが用いられている[464]。
- 100(ハンドレッド)パイパーズ(100 Pipers)
- ジョセフ・E・シーグラム社製造。原酒はグレンキースなど30種類[462]。
- ハムレット(Hamlet)
- ギブソン・インターナショナル社製造。銘柄名の由来はウィリアム・シェイクスピアの悲劇『ハムレット』[462]。
- ヘッジズ&バトラー(Hedges&Butler)
- ヘッジズ&バトラーリミテッド製造。イギリス王室から"Royal Scotch Whisky"とラベルに表記することを許されている[462]。
- ハウス・オブ・スチュアート(House Of Stuart)
- ハウス・オブ・スチュアート・ボンディング社製造。ラベルに名前記入欄がある[462]。
- インバー・ハウス(Inver House)
- インバー・ハウス・ディスティラーズ社製造[463]。
- アイル・オブ・スカイ(Isle Of Skye)
- 銘柄名はスカイ島に由来。原酒はタリスカーなど[463]ザ・クイーンズ・シールの姉妹品[465]。
- J&B
- ジャステリーニ&ブルックス社製造。売り上げは全ブレンディッドウイスキー中第2位。当初は「クラブ」という名で、1933年にJ&Bと改められた。36種類のモルトと6種類のグレーンがブレンドされており、主要モルトはノッカンドオ、タムドゥーなどのスペイサイドモルト。口当たりのよさが特徴[466]。
- ジェイムス・マーチン(James Martin's)
- ジェイムス・マーチン社製造。原酒はグレンマレイなど[463]。
- ジョニー・ウォーカー (Johnnie Walker)
- ジョン・ウォーカー&サンズ社製造。世界で最も消費量の多いブレンデッドウイスキー。主要な原酒はカデュー、タリスカーなど[467]。
- キング・オブ・スコッツ(King of Scots)
- ダグラス・ラング社製造[463]。
- ラングス(Langs)
- ラング・ブラザース社製造[468]。
- ラングサイド(Langside)
- ラングサイド・ディスティラーズ社製造[468]。
- リズモア(Lismore)
- ウィリアム・ランディー社製造[468]。
- ロング・ジョン(Long John)
- ロング・ジョン・ディスティラリーズ社製造[469]。
- マッキンレー(Mackinlay's)
- チャールズ・マッキンレー社製造[469]。
- マリー・ボーン(Marry Born)
- ホッダー社製造[469]。
- マックギボン(Mc Gibbon's)
- ダグラス・マックギボン社製造[469]。
- ミッチェルズ (Mitchell's)
- グレンガイル蒸留所製造のシングルモルト「キルケラン」を用いている[343]。
- オールド・アーガイル(Old Argyll)
- バーン・スチュアート社製造[469]。
- オールド・フランシス(Old Francis)
- シャリエリシャール社製造[469]。
- オールド・パー (Old Parr)
- マクドナルド・グリンリース社製造。銘柄名は152歳9か月まで生きたといわれるイギリスの農夫、トーマス・パーから。「時代がどんなに変わろうとも変わらぬ品質を約束する」という意味が込められている。クラガンモアなどスペイサイドモルトを中心に構成されており、ピート香と深いコクが特徴[470]。
- オールド・ロイヤル(Old Royal)
- バーン・マッケンジー社製造。主要な原酒はディーンストン[471]。
- オールド・スマグラー(Old Smuggler)
- ジェームズ&ジョージ・ストダート社製造。スマグラー(Smuggler)は酒の密造者を意味する[471]。
- オールドセントアンドリュース(Old St.Andrews)
- オールド・セント・アンドリュース社製造。銘柄名はスコットランドのゴルフ場、ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュースから[471]。
- パスポート(Passport)
- ウイリアム・ロングモア社製造。主要なモルトはグレンキース[471]。
- ロイヤル・アスコット(Royal Ascot)
- セント・アンドリュース・ディスティリング社製造[471]。
- ロイヤルカリス(Royal Chalice)
- ヴィンテージ・モルト・ウイスキー・カンパニー社製造[471]。
- ロイヤル・ハウスホールド(Royal Household)
- ジェームズ・ブキャナン社製造。銘柄名はイギリス王室を意味し、皇太子時代のエドワード7世専用に作られたブレンデッドウイスキーを起源とする。皇太子時代の昭和天皇の訪英をきっかけに特別に許可された日本以外の国では一般に飲むことができない。主要モルトはダルウィニー。風味は洗練されていて上品[472]。
- ロイヤルサルート(Royal Salute)
- シーバス・ブラザーズ社製造。銘柄名はイギリス海軍が撃つ「皇礼砲」から。もともとはエリザベス2世の即位を記念する限定品として作られた。皇礼砲が21発の空砲であることから、21年以上熟成させたモルトのみが用いられている。容器の色には青、赤、緑の3種類があるが、これはイギリス国王の王冠の宝石の色と同じである。主要モルトはストラスアイラ。味わいはなめらかで甘く深いコクを持つ[473]。
- スコッツ・クラブ(Scots Club)
- ブルース&カンパニー社製造[474]。
- サムシング・スペシャル(Something Special)
- ヒルトン・トムソン社製造[474]。
- スペイサイド(Speyside)
- スペイサイド蒸留所を運営するスペイサイド・ディスティラリー社製造。単式蒸留器を模した容器に入れられている[475]。
- シンジケート58/6(Syndicate 58/6)
- インヴァーゴードン・ディスティラーズ社製造。18種類をヴァッティングしたモルトウイスキー65%と、2種類をヴァッティングしたグレーンウイスキー35%を配合[474]。
- タプローズ(Taplows)
- タプローズ社製造[474]。
- ティーチャーズ(Teacher's)
- ウイリアム・ティーチャーズ&サンズ社製造。主要モルトはグレンドロナックとアードモア[474]。
- ジ・エグゼック(The Exec)
- バーン・スチュワート・ディスティラーズ社製造[474]。
- ジ・インヴァーアラン(The Inverallan)
- インヴァーアラン社製造[465]。
- ザ・クイーンズ・シール(The Queen's Seal)
- イアン・マクロード社製造。アイル・オブ・スカイの姉妹品[465]。
- トマーチン(Tomatin)
- トマーチン・ディスティラリー製造[465]。
- ウシュクベー(Usquaebach)
- トゥエルヴ・ストーン・フラゴンズ社製造[476]。
- ウィーラック(Wee Loch)
- ザ・トマーチン・ディスティラリー社製造[476]。
- ホワイト・ヘザー(White Heather)
- ホワイト・ヘザー社製造。銘柄名は「白いヒースの花」を意味する[465]。
- ホワイト・ホース (White Horse)
- ホワイトホース・ディスティラーズ社製造。銘柄名はスコットランド独立軍の定宿で、自由独立の象徴とされるエジンバラの酒場兼旅館「ホワイトホース・イン」から。主要モルトはピート香の強いラガヴーリンで、そこにクライゲラヒ、グレンエルギンなど甘味のあるスペイサイドモルトを加えることによりピート香となめらかさを併せ持つ風味に仕上がっている[477]。
- ホワイトマッカイ(White&Mackay)
- ホワイト&マッカイディスティラーズ社製造。全スコッチウイスキーの生産量の10%を銘柄。ブレンドの質を高めるため、シェリー樽を用いたダブルマリッジ(後熟を2回行うこと)を行っている。香りは弱く、味にまろみがある[478][479]。
グレーンウイスキー
- ブラックバレル(Black barrel)
- エア州にあるカーヴァン蒸留所製造のシングルグレーン。銘柄の由来は熟成に用いる樽の内側を黒く焼くことから[480]。
- キャメロンブリッジ(Cameronbridge)
- キャメロンブリッジ蒸留所製造のシングルグレーン[480]。
この節は執筆中です。加筆、訂正して下さる協力者を求めています。瓶詰業者
ゴードン&マクファイル社の「コニサーズ・チョイス」のラベル(アードベッグ) - ゴードン&マクファイル社(G&M社)
- 1895年創業。エルギンに本社を持つ。ボトラーズ・カンパニーの先駆的存在で、蒸留所からニューポットを購入して自前のシェリー樽で熟成し、瓶詰販売する。加水の際に軟水を使用することで知られ、同社の製品は総じて柔らかい風味に仕上がる。17000に及ぶ樽を保有。稀少品ブランドとして、古地図のラベルデザインで統一された「コニサーズ・チョイス」シリーズがある[481]。
- ウイリアム・ケイデンヘッド社
- 1842年、エジンバラで創業。現在はキャンベルタウンに本社をもつ。カスクストレングスを広めたことで知られ、加水のほか低温濾過や樽同士のヴァッティング、着色を行わない[482][483]。キャンベルタウンのスプリングバンク蒸留所と同資本[484]。ゴードン&マクファイル社と並ぶ最大手[483]。
- シグナトリー・ビンテージ・スコッチ・ウイスキー社
- 1988年、リースで創業。80あまりの蒸留所のウイスキーを取り扱い、瓶詰めと保管を自社で行う。ラベルには樽の番号、ボトル番号が記載されている。保有する樽はおよそ11000。[485]。モルトはすべてシングル・カスク[486]。
- サマローリ社
- 1968年創業。本拠地はイタリアのブレシア。創業者のシルヴァーノ・S・サマローリは自ら仕入れ前と瓶詰め前の2度にわたって試飲を行い、その際の評価をラベルに記載することで商品の風味を顧客に知らせる。瓶詰め前の試飲でサマローリの舌にかなわなかったウイスキーはすべて他社に売却される。濾過を常温で行う、加水に時間をかけ、瓶詰め後にエタノールと水をなじませるための期間を設けるなど、独自の工夫を行っている[487]。
- ムーン・インポート社
- 1980年、イタリアのジェノヴァで創業。イタリアにおける3大インディペンデント・カンパニーのひとつ。サマローリ社と同様、経営者自らテイスティングを行い、舌にかなうウイスキーのみを瓶詰めする。ラベルのデザインにコンピュータグラフィックスを用いることで知られる[488]。
- キングズバリー社
- ロンドンに本拠がある。旧社名はイーグルサム社。ニューポットを樽ごと購入し、シェリー樽い詰めて自前の貯蔵庫で熟成させる。ラベルには蒸留年月日、瓶詰年月日、産地、樽の種類などのデータと、鑑定家による評価が記載されている[489]。
- ウィルソン&モルガン社
- 1992年、エジンバラで創業。コストパフォーマンスのよさで注目を集める[490]。
- ダンカンテイラー社
- 本拠地はハントリー。アメリカ人アベ・ロッセンベルグが1960年代以降購入したスコッチウイスキーを購入し、ボトリングしている。低温濾過焼加水は行わない[486]。